語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】マザー・グース「ハンプティ・ダンプティ」 ~オール・ザ・キングス・メン~

2015年06月06日 | 詩歌
      Humpty Dumpty ”Through the Looking-Glass,and What Alice Found There”
    


 ハンプティ・ダンプティ へいにすわった
 ハンプティ・ダンプティ ころがりおちた
  おうさまのおうまをみんな あつめても
  おうさまのけらいをみんな あつめても
 ハンプティを もとにはもどせない

 Humpty Dumpty sat on a wall,
 Humpty Dumpty had a great fall.
 All the king's horses,
 And all the king's men,
 Couldn't put Humpty together again.

  *  

 ヨーロッパ各地(仏、独、デンマーク、スウェーデンなど)に卵の紳士を題材とした唄が伝わっている。ハンプティ・ダンプティの唄は、もとは卵を答とする謎々だったが、ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』によって謎々だったことが忘れ去られるほど周知された。名高い唄だけに、パロディも多い。
 ハンプティ・ダンプティのイメージは「非常に危なっかしい状態」「もとに戻せない状態」「丸まるとした人や頭」などだ。

 ハンプティ・ダンプティは、今や古典となった2本の映画のタイトルの下敷きになっている。
 (1)『オール・ザ・キングズメン』の原題は ”All The King's Men”(1949.US)。ロバート・ペン・ウォレンの長編小説『王様の臣下をみんな集めても』(1946年ピューリッツア賞受賞)の映画化だ。独裁的な権力をふるった政治家ウィリー・スタークの破滅の物語で、「もうどうにもならない」政治腐敗の状況を描いている。
 (2)ウォーターゲート事件を扱った『大統領の陰謀』の原題は "All the President's Men"(1946.US)。このフレーズを聞いただけで、マザーグースを聞いて育った人なら「塀から落ちた卵」を連想する。大統領の側近がどれだけもみ消し工作をしたところで、失脚したニクソンを元に戻すことはできない、というニュアンスをこの本歌取りで鮮やかに描きだす。

□谷川俊太郎・訳/堀内誠一・画『マザー・グース・ベスト 第1集』(草思社、2000)
□「Humpty Dumpty」(“THE MOTHER GOOSE TREASURY”,YOHAN PUBLICATIONS,INC,TOKYO,JAPAN,1966/レイモンド・ブリッグズ・絵。ケイト・グリナウェイ賞、英国図書館協会大賞)
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 【参考】
書評:『映画の中のマザーグース』

     楽譜
   


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