語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】「汚染」のいま ~東京・国分寺市の市民放射能測定所~

2015年03月16日 | 震災・原発事故
 (1)食品については、放射能の影響はかなり減ってきた。
 首都圏近辺の作物は、ほぼ1ベクレル(Bq)/kg未満不検出で、出るのはキノコ類などが数十Bq/kgとか。

 (2)食品と違って、土壌は必ず放射能が検出される。
 「こどもみらい測定所」(東京・国分寺市)は2011年12月に立ち上げた。それ以来、900検体の土を測ってきたが、必ず放射能が検出される。
 実は、食品が検出限界以下になってきた大きな理由は、日本の粘土質の土がしっかりセシウムを吸着しているからだ。逆に、土を測ると必ずセシウムが出る。セシウム134は半減期が2年なので今は4分の1程度だが、セシウム137の値はほとんど下がっていない。
 福島市内の普通の庭土を深さ5cmで掘ると、2,000Bq/kgなど出るし、国分寺の土でも50~200Bq/kgは出る。
 3・11前は、各国の核実験の影響があっても、10Bq/kgを超えることはほぼなかった。
 土の測定依頼は、生産者や家庭菜園の利用者が1割程度。残りの9割は、ほとんどお母さんで、自分の子どもが遊んでる保育園や公園の土を調べたい、という人たちだ。
 <例>東葛飾地区(柏市、流山市など千葉県北西部)【注1】では200~2,000Bq/kg程度出る。

 (3)土壌の数値が今も高いことは、あまり知られていない。
 そもそも、行政は原則的には土を測定しない。

 (4)こうした実態を知ってもらうために、市民放射能測定データサイト「みんなのデータサイト」【注2】で、「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」が動き始めている。
  (a)各地の市民放射能測定所26団体(2015年2月現在)が、このプロジェクトに参加して、北は青森県から南は静岡県までの17都県について、1都県で最低100か所、東日本全体で1,700か所を測定する計画だ。すべての土壌の表面から5cmの深さで測る。深さを統一すれば地域の比較ができる。文部科学省やチェルノブイリの基準とも同じなので、一定の比較もできる。
  (b)2段階で公表する。
    ①郵便番号レベルの表形式・・・・3月中をめどに、宮城県など、すでに先行して動いてきたものから200件くらいは公表していく。その後、1年くらいをかけて1,700件を集める。
    ②地図画像ベース・・・・個人の庭を特定したりしない拡大レベルの地図形式を使う。さしあたり、3月29日に東京・水道橋のYMCAアジア青少年センターで、報告イベントを行う。
  (c)データは、基本的には各地域の判断で活用する。2012年から13年にかけて先行実施した岩手県の土壌汚染マップがあるが、値が高い地域では行政に健康診断や除染基準の見直しを求めた。こうしたことを東日本全域でやれるといい。
  (d)ただし、「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」が行うのは、あくまでもそのプラットフォームをつくること。各地域で測定して、データを集約し、広範なベクレル測定値マップをつくるというものだ。それをもとに、行政などへのアクションにつなげたり、転居を考えている人が転居先候補の土壌汚染度を知る参考にしたりしてもらう。
  (e)土壌汚染と生産物の汚染とが必ずしも一致するわけではないことも、ちゃんと説明していく。
 
 (5)3・11では、たまたま福島第一原発が太平洋に面していたから、ほとんどの放射能が偏西風で太平洋に運ばれた。それでも、3月15日に内陸に向いた風や、3月21日の雨だけで、飯舘村など住めなくなった場所ができた。関東各地も、それぞれ汚染された。
 もし、日本海に面した敦賀や柏崎刈羽、内陸の川内や玄海などの原発で事故が起きたら、こんな汚染では済まない。
 現状の値で済んでいるのは、ひとえに風向きと地形の影響にすぎない。だのに、それがきちんと認識されずに、「のど元すぎれば」で、再稼働が進むことに危惧を覚える。
 そういう意味で、できるだけ正確に測ったデータを積み上げて、たった1日、2日の風や雨だけでも、どれだけ汚染が残るかを知ってもらいたい。
 プロジェクトを通して、新しいつながりと活力が生まれることを期待する。

 【注1】
【原発】【食】関東の食材からセシウム ~安部首相的「安全」の実態~
【原発】汚染度が深まる首都圏の水
【震災】原発>ついに始まった千葉県柏市の人口流出
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【震災】原発>無防備都市--東京を覆う放射能

 【注2】市民放射能測定データサイト「みんなのデータサイト

□語り手:石丸偉丈(「こどもみらい測定所」代表/聞き手:山村清二(編集部)「市民放射能測定所が見た“汚染”のいま」(「週刊金曜日」2015年3月13日号)
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 【参考】
【原発】放射能汚染と除染工事 ~環境破壊~