(1)川端康成『雪国』のモデル地、新潟県湯沢町のマンションに空き家が増え、ゴーストタウン化している。
1980年代後半のバブル期にはリゾートマンションが乱築されたが、今や50平米当たりの販売価格は、下落率6~9割に及ぶ。
(2)豪雪地帯の秋田県大仙市、仙北市、美郷町も、空き家が廃墟をなす。ここで問題になっているのは戸建て住宅だ。
雪下ろし費用が年間30万~50万円。この地出身だが、住んでない人でも、固定資産税より高い雪下ろし費用を払わねばならない。さもないと、雪の重みで崩壊してしまう。
秋田県は人口減少率が全国ワースト1位。持ち家比率も78.4%と全国1位。今後、空き家の増加が加速度的に進んでいく。
昨年6月末、秋田銀行では、全国初の「空き家解体ローン」を商品化した。空き家解体に150万円ぐらいかかる。秋田県下では14の自治体が解体補助として30万~50万円を給付する制度を設けているが、補助金では足りない100万円程度を銀行ローンで補おうというものだ。
(3)空き家問題の顕在化は地方だけではない。むしろ都会、首都圏の問題になりつつある。
千葉県・木更津駅からバスで15分、丘陵地に造成された敷地に1,800戸の戸建て住宅が建ち並ぶ大久保団地がある。その多くは雨戸が閉められ、人の気配が全くない。草木が生え放題の家、壁の塗装が剥げ落ちた家。
開発されたのは、高度経済成長期。近隣には、新日鐵住金の君津製鉄所が1965年に稼働、川崎市の工業地帯ともカーフェリーで往来できたため、大久保団地はベッドタウンとして急成長を遂げた。
それから50年。住人の多くは高齢者となった。高齢化率(65歳以上の人が占める)は、団地内7ブロック全てで40%超、中には50%超のブロックもある。
50%超とは、共同体としての体をなさない限界集落だ。
空き家の増加で、トラブルが頻発する。突風でトタンやアンテナなどが隣家に飛んできたり、植栽が歩道に飛び出したり。
街から人が消える。街が荒廃する。固定資産税や住民税の納付が減り、自治体の財政が逼迫する。
(4)日本全国に820万戸の空き家が存在する【総務省「2013年住宅・土地統計調査」】。全住宅に占める空き家の比率は13.5%で、戸数・構成比率共に過去最高となった。
2035年の空き家率は32.0%、つまり3軒に1軒は空き家になる【野村総合研究所】。
(5)空き家はなぜ生まれるのか。
(a)高齢化と人口(世帯数)減少が根元だ。
(b)更地にした場合、固定資産税が6倍に跳ね上がるため、建物をそのままにしておく所有者が多い。
(c)業界では、建物の価値を適切に反映させていない。税法上の耐用年数22年に引きずられて、20~25年で建物の価値をゼロにしている。
(6)深刻化する空き家問題の浮上に、国・行政も重い腰をあげた。
(a)空き家対策特別措置法・・・・昨年11月成立。放置すれば倒壊の危険があったり、治安を害したりする建物が「特定空き家等」に指定された。
(b)自民党の2015年度税制大綱・・・・空き家放置を助長する固定資産税の優遇措置の見直しが盛り込まれた。「特定空き家等」に指定されると、固定資産税が一気に6倍になる。
(c)空き家撤去ガイドライン・・・・今年2月18日、国土交通省や総務省がまとめた。(a)の行動指針に相当するもの。「1年間使用のない建物」を判断目安として、市町村が強い権限を持ちながら空き家のスクラップや利活用を促進できる。
□記事「不動産が「負」動産に 中古住宅暴落の危機」(「週刊ダイヤモンド」2015年3月7日号の「特集1 高く売れる家 売れない家」のうち第1章)
↓クリック、プリーズ。↓
1980年代後半のバブル期にはリゾートマンションが乱築されたが、今や50平米当たりの販売価格は、下落率6~9割に及ぶ。
(2)豪雪地帯の秋田県大仙市、仙北市、美郷町も、空き家が廃墟をなす。ここで問題になっているのは戸建て住宅だ。
雪下ろし費用が年間30万~50万円。この地出身だが、住んでない人でも、固定資産税より高い雪下ろし費用を払わねばならない。さもないと、雪の重みで崩壊してしまう。
秋田県は人口減少率が全国ワースト1位。持ち家比率も78.4%と全国1位。今後、空き家の増加が加速度的に進んでいく。
昨年6月末、秋田銀行では、全国初の「空き家解体ローン」を商品化した。空き家解体に150万円ぐらいかかる。秋田県下では14の自治体が解体補助として30万~50万円を給付する制度を設けているが、補助金では足りない100万円程度を銀行ローンで補おうというものだ。
(3)空き家問題の顕在化は地方だけではない。むしろ都会、首都圏の問題になりつつある。
千葉県・木更津駅からバスで15分、丘陵地に造成された敷地に1,800戸の戸建て住宅が建ち並ぶ大久保団地がある。その多くは雨戸が閉められ、人の気配が全くない。草木が生え放題の家、壁の塗装が剥げ落ちた家。
開発されたのは、高度経済成長期。近隣には、新日鐵住金の君津製鉄所が1965年に稼働、川崎市の工業地帯ともカーフェリーで往来できたため、大久保団地はベッドタウンとして急成長を遂げた。
それから50年。住人の多くは高齢者となった。高齢化率(65歳以上の人が占める)は、団地内7ブロック全てで40%超、中には50%超のブロックもある。
50%超とは、共同体としての体をなさない限界集落だ。
空き家の増加で、トラブルが頻発する。突風でトタンやアンテナなどが隣家に飛んできたり、植栽が歩道に飛び出したり。
街から人が消える。街が荒廃する。固定資産税や住民税の納付が減り、自治体の財政が逼迫する。
(4)日本全国に820万戸の空き家が存在する【総務省「2013年住宅・土地統計調査」】。全住宅に占める空き家の比率は13.5%で、戸数・構成比率共に過去最高となった。
2035年の空き家率は32.0%、つまり3軒に1軒は空き家になる【野村総合研究所】。
(5)空き家はなぜ生まれるのか。
(a)高齢化と人口(世帯数)減少が根元だ。
(b)更地にした場合、固定資産税が6倍に跳ね上がるため、建物をそのままにしておく所有者が多い。
(c)業界では、建物の価値を適切に反映させていない。税法上の耐用年数22年に引きずられて、20~25年で建物の価値をゼロにしている。
(6)深刻化する空き家問題の浮上に、国・行政も重い腰をあげた。
(a)空き家対策特別措置法・・・・昨年11月成立。放置すれば倒壊の危険があったり、治安を害したりする建物が「特定空き家等」に指定された。
(b)自民党の2015年度税制大綱・・・・空き家放置を助長する固定資産税の優遇措置の見直しが盛り込まれた。「特定空き家等」に指定されると、固定資産税が一気に6倍になる。
(c)空き家撤去ガイドライン・・・・今年2月18日、国土交通省や総務省がまとめた。(a)の行動指針に相当するもの。「1年間使用のない建物」を判断目安として、市町村が強い権限を持ちながら空き家のスクラップや利活用を促進できる。
□記事「不動産が「負」動産に 中古住宅暴落の危機」(「週刊ダイヤモンド」2015年3月7日号の「特集1 高く売れる家 売れない家」のうち第1章)
↓クリック、プリーズ。↓