自己憐憫・自己愛・自己中心的……主人公はこう形容するしかない。とにかくしょーもないヤツなのである。中古レコードショップを経営しながら、女から女へ渡り歩き、ガールフレンドから別れを告げられると逆上し、自分のどこが悪いのかを昔の女たちにききにいく厚顔さ(現代版「舞踏会の手帖」)。自分の浮気は棚に上げ、彼女が他の男と寝たことをいつまでも責め続ける……えーと、開き直るようで申し訳ないが
でも男ってこんなもんだ。
男性諸君なら心当たりがあるでしょうや。女性にしたって自分とつきあってきた男たちには、こんな傾向が確実にあったでしょう?
そしてこのジコチューなロックマニアである主人公の最大の欠点は、なんでもトップ5にしてしまうことだ。『失恋の痛手トップ5』(現在の失恋が“赤丸急上昇中”ってのには笑った)、『彼女のお父さんのお葬式に似合う曲トップ5』(うわ!ゴードン・ライトフットの「エドマンド・フィッツジェラルド号の難破」THE WRECK OF THE EDMUND FITZGERALDまで)とか。要するに子どもなのである。
こんな、男の幼児性を許せる人なら、ほんの少し苦いラストはお気に召していただけると思う。この男は徹底して成長しないが、しかしそれゆえの美点もまた、存在するはずなのだ。原作は「アバウト・ア・ボーイ」(題名に反して、二人の“少年たち”の物語だった)のニック・ホーンビィ。大人になれない中年男を描かせたら天下一品。
レコードショップの店員ジャック・ブラック(スクール・オブ・ロック!)とトッド・ルイーゾがひたすらおかしいし、恋人役イーベン・ヤイレの美しさには息をのむ。彼女、オレの心のトップ5に、確実に入るなあ。
※もちろんこの映画の最大の魅力は音楽にある。娘へのプレゼントとして「心の愛」を買いに来た客に「娘さんはこんな駄作聴かないにきまってる!」と決めつけたJ.ブラックには笑ったが、それでもスティービー・ワンダーはサントラにちゃんと入っている。大人である。それと、ちょっと意外な大物ミュージシャンが特別出演しているのでお見逃しなく。いやーびっくりした。
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