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誰でも指摘するはず、オリエント急行それ自体の美しさを。
なにしろ徹底的に作りこまれている。鉄道マニアだった原田芳雄が生きていたら狂喜しただろう。雪崩と列車のシンクロが、事件に激しく影響している構図はこのCGあればこそ。絵がとにかくきれいなんだよなあ。コンパートメントを出て列車を降りるポワロを、ステディカムでずーっと追うカメラもすばらしい。
そして、まどろっこしいけれども犯人の描写はまことに端正だ。最後の晩餐そのままにキャストを勢ぞろいさせ、無謬の名探偵が事件を一刀両断にする。その名探偵が空気が読めないことは自他共に認めるところで……
役者が監督をする場合、どうしても演技に引っぱられて作品が冗長になる傾向はある。ケネス・ブラナーにもそれはあると思う。シェイクスピア役者であるからこそのユーモアはあっても、いい芝居をしたカットを切れなかったのだろうと思える部分もいっぱい。
しかし逆に見せる部分も。スター・ウォーズの元気なお姉ちゃんはやっぱりすごいし(わたしの友人は「フォースの覚醒」で彼女が出てきた途端、「うわ!あいつ好みな女優だ」と一発で見抜いたくらいなので、多少割り引いて考えていただいてもよろしいかと)。なによりミシェル・ファイファーの描き方は、監督の裁量を超えて彼女に淫していたんじゃないかと思うくらい。
そうなんですよ。この映画はミシェル・ファイファーの映画だったんです。でも隠居していた時期もあるくらい彼女はキャリアに意味を見出していない。なにしろわたしが初めて彼女を見た「眠れぬ夜のように」でいきなりフルヌードを披露しているぐらいだし。
不遜で申しわけありませんが、ケネス・ブラナー、ミシェル・ファイファーとわたしはほぼ同世代。夢のように綺麗な女だったファイファーに、いろんな人たちがこの大芝居を用意したんでしょう。エンドタイトルで彼女の久しぶりの歌声が聞こえた瞬間にわたしもこの映画が大好きになりました。
シリーズ化されたら次作は「ナイルに死す」になることが示唆される。でもブラナー、またミシェルを使うってのは無理だからな。おれも残念だけど。
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