事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「きつねのはなし」 森見登美彦著 新潮文庫

2009-07-27 | 本と雑誌

Kitsunenohanashi 京の骨董店を舞台に現代の「百物語」の幕が開く。注目の俊英が放つ驚愕の新作。細長く薄気味悪い座敷に棲む狐面の男。闇と夜の狭間のような仄暗い空間で囁かれた奇妙な取引。私が差し出したものは、そして失ったものは、あれは何だったのか。さらに次々起こる怪異の結末は―。端整な筆致で紡がれ、妖しくも美しい幻燈に彩られた奇譚集。
(「BOOK」データベースより)

夜は短し歩けよ乙女」でブレイクする直前の作品。かなりダークな味わい。主人公自身が「ケモノの顔になっている」と指摘されるあたり、ミステリ的興味も十分。「水神」など、スティーブン・キングを明らかに意識している(ま、みんなそうなんだろうけどさ)。

「夜は~」では気づかなかったけれど、この人はファンタジーや“奇妙な味”よりも、意外に純文学志向が強いのではないだろうか。なんか、そんな気がする。

 学生たちが駄菓子をほおばる描写を入れて、心根はまだ子どもなのだと強調するテクニックは後の作品でさんざん使われている(赤玉ポートワインとかね)。うまいものだ。“概念としての京都”がお好きな人には特にお薦めできるかと。

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