事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

史劇を愉しむ~第13章「風とライオン」(1975 MGM=コロンビア)

2010-07-13 | 洋画

Thewindandtheliondvd 第12章「栄光への脱出」はこちら

1904年、米英など列強諸国の陰謀渦巻くモロッコのタンジールで、アメリカ人女性イーデン(キャンディス・バーゲン)とその子どもたちがリフ族首長ライズリ(ショーン・コネリー)に誘拐された。

選挙を目前に控えていた米国大統領セオドア・ルーズベルト(ブライアン・キース)は夫人奪還のために大西洋艦隊を派遣。ここに一度も会ったことのない男同士の戦いの火蓋が切って落とされた…。

かなりの脚色があるものの、20世紀初頭に似たような事件は現実に存在したらしい。当時のモロッコは列強がお互いを牽制しあう状況にあり、サルタンは西欧のいいなりになっていた。ライズリが誘拐事件を起こしたのはその状況打破のためだったわけ。帝国主義の時代に、男気一本で突っぱるライズリは確かに魅力的。やることは無茶だけど。

 結果としてルーズベルトの作戦は奏功するので、誘拐そのものはやはり列強には通じなかった。近代は、「西欧の専横とその影響」に総括できると思うんだけど、この事件はその典型。アラブを蛮族として蹴散らすその姿勢は、いまもどこかに息づいている。それはわたしたちアジア人に対しても同様だろう。蛮族退治を政治的宣伝に利用するってのはどこかで聞いたことがあるお話じゃないですか。

 アラブの首長をスコットランド人であるショーン・コネリーが演じるのはいかがなものかと思うけど(実際にアラブ人に演じさせたらハリウッド映画にならない、ってあたりがアメリカの限界)、しかし実にいい味を出しているのも確か。キャンディス・バーゲンが次第に惹かれていくのもわかる。モロッコの街を騎馬が突っ走る映像はそれだけで心躍る。さすが、黒澤明フリークであるジョン・ミリアスである。

 ラストに読み上げられるルーズベルトへのライズリの手紙が泣かせる。

「あなたは風のごとく、私はライオンのごとし。あなたは嵐をまきおこし、砂塵は私の眼を刺し、大地はかわききっている。私はライオンのごとくおのれの場所にとどまるしかないが、あなたは風のごとくおのれの場所にとどまることを知らない」

 これって「七人の侍」のラストの志村喬のセリフじゃん!

第14章「ワルキューレ」につづく

Thewindandtheliontr

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 参院選2010 | トップ | 「マイレージ、マイライフ」 ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

洋画」カテゴリの最新記事