事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「黄金旅風」 飯嶋和一著 小学館刊

2008-03-06 | 本と雑誌

Iijimawaichi01 事務職員へのこの1冊②
神無き月十番目の夜
飯嶋 和一著  河出書房新社
 藤沢周平が逝ってしまい、もう県人作家で期待できるのは井上ひさしと丸谷才一ぐらいか?とお嘆きの方も多いと思います。しかしとんでもございません。期待の新鋭は山形に集中しているといっても過言ではなく、阿部(シブヤ系)和重、奥泉(「グランドミステリー」は大傑作)光、そしてこの、飯嶋がブレイク寸前といった盛況です。

 この作品は、いわゆる時代物の範疇に入るのでしょうが、藤沢のそれが一種のファンタジーを含んでいるのに比して(反論多そうだな)、徹頭徹尾リアルに迫ってくる(神すらも)点に特徴があり、その辺りで好き嫌いが分かれたり、ほとんど現代劇ではないか、とする意見が出てくるのだと思います。

 内容は、時代の流れのために消えていこうとしている土着の武士集団が、お上のやり方(行政、ですな)に抗わざるを得なくなってしまう経過を、それこそ主人公は一体誰なんだ!と言いたくなるぐらいに微細に描いています。労働組合員としてうなずける点も多々あるのですが、しまいには登場人物が根こそぎと言っていいほど死んでしまうので、素直にお薦めできないところもあるかな。縁起でもないし。

 それにしても惜しまれるのは、直木賞は受賞確実と言われながらノミネートすら拒んでしまう飯嶋の欲の無さ。貰えるもんなら貰っときゃいいだろうに。実家の近くにお住まいの方、言っといてくれませんか?ま、大きなお世話ですが。(前作「雷電本紀」がまた泣ける)

 山形県教職員組合事務職員部報№295 1998.8.11

Iijimawaichi02 ……もう10年も前になるのか、飯嶋を組合の情宣で紹介したのは。このときは佐藤賢一がすぐ後に直木賞をとるとは予想もしていなかったんだよな。

 それはともかく、飯嶋はまったく変わっていない。直木賞を拒否し続けていることも、超寡作であることも。わずかな変化は、確実に“面白く”なっているぐらいか。今回の「黄金旅風」は、鎖国に突き進む長崎における商人と武士の暗闘がメイン。愚かな政治家たちへ叩きつける、人間の「器量」をめぐるお話でもある。9.11以後の世界への、飯嶋のやむにやまれぬ叫びでもあろう。必読の書。わたしは一週間、眠れぬほど興奮しながら読んだ。

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1 コメント

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わたしが応援している図書館のすぐれちゃん、真珠... (さくら)
2008-12-11 05:56:24
わたしが応援している図書館のすぐれちゃん、真珠書院が
神奈川県立高校の必読・推薦図書になりました。
応援してください。
よろしくお願いします。
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