妾との仲が疎遠になりつつある大店の主人。後妻が部屋を訪れたとき、彼はすでにこときれていた。口の中に牡丹の花びらをつめこまれて……
弥勒シリーズ最新作。性格最悪だけれどもやたらに頭が切れる同心の木暮信次郎と、暗殺者だった過去を振り捨てて商売人として生きていこうと懸命な遠野屋清之介がからむ。オープニングの事件はホラー風味。しかし木暮は、主人が妾の恨みによって取り殺されたなどとは考えない。
・なぜ主人は妻と別室で寝ていたか。
・牡丹の花びらが口にあることにどんな意味があるのか。
……などを理詰めで解いていく。いちいち皮肉まじりなので岡っ引きの伊佐治親分に非難されながら。
あさのあつこの心理描写はあいかわらず過剰で(笑)、そこまで説明してくれなくてもいいのになあとは思う。まあ、そこんところを差し引いても、どSな木暮のキャラはやはり得がたい。ベストセラーになっている理由の多くは木暮の設定にあると思います。単純な名探偵ではなかなかこの味は出ない。
でも、希代の悪女を登場させて(きっと彼女はこれからもなんらかの形で出てくる)木暮の邪悪さとバランスをとったとしても、広い江戸のなかで、彼女ほど邪悪なのがひとりしかいないってのはどうでしょ。
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