White Collar Exemption①はこちら。
07年1月24日付事務職員部報より。
事務系労働者にとって大きな問題になることが予想されたにもかかわらず、ホワイトカラー・エグゼンプション(以下、例によってWE)のことは大きな話題にならずにきました。それが年末になっていきなり火がついたのは、当初
・製造業の労働者は対象にしない
・年収要件は1000万円以上の管理職層
という条件がついていたからでしょう。要するに自分には関係のない話だったわけです。ところが、厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会の議論が進むにつれ、次第に適用条件があいまいになり、しまいには
・年収要件は400万円以上
と、多くの労働者が対象になる見込みになったからです。この条件だと、総額11兆6千億円、ホワイトカラー労働者ひとり当たり年114万円の残業代が消え失せる計算になります(※)。これは、しゃれにならない。
※WEによって残業代が消えるのは、“残業”という概念自体が消え失せてしまうからです。自律的に勤務時間を決めることができる、という建前ですから。
いったいこんな制度を雇用側以外に支持する人がいるのかな、と不思議に思っていましたが、街角インタビューなどで「いいんじゃないですか?」と発言する人もいたので驚きました。こんな理屈です。
「勤務時間中はダラダラしていて、そのくせむだな残業をして手当を稼いでいる人が多いんですよ!」
「同じ仕事の量なのに、かける時間が長い方が結局はたくさんお金がもらえるってのは理不尽じゃないですか。」
つまり、特に若い人を中心に成果主義を支持する層がけっこういると考えられるのです。でも、これは「がんばった分だけ評価されるはず」という一種の楽観論にもとづいています。県事務研で県職労の賃金部長はこんなことを言っていました。
「わたしは病院に勤めていますけど、収益がどれだけ上がるかで評価されるとしますね。そうなるとどうしても規模の大きい病院にいた方が有利なんですよ。わたしは○○病院にいますが、この規模だとどれだけがんばっても評価は低いものになってしまいます。するとどうなると思いますか?○○病院全体の士気は下がってしまうんです。つまり、患者の利益につながらない。それに、成果主義を最初に採り入れたのは富士通ですけれど、あそこはもう(成果主義を)やめています。なぜなら……」
ベストセラーになった『内側から見た富士通~成果主義の崩壊』(城繁幸著 光文社刊)に詳しいので紹介しましょう。大手のなかでもっとも早く成果主義performance-paid systemを導入した富士通は……
◎品質チェックの部署のように、成果主義の恩恵を受けられない部署のモチベーションが低下した。
◎たいして会社に貢献してもいないのに、構造上、高い評価をもらえる人間がいる一方、花形部署では評価をめぐり熾烈な争いが展開されていた。
◎「成果主義」のはずなのに、チェックするのは、残業時間と年次休暇と勤怠の数字だけ。
◎各部の評価をすりあわせる評価委員会は、「各部がそれぞれ何人悪い評価を引き取るか」のババ抜きと化していた。
◎降格制度がなかったため、「お手軽な目標」をかかげ、全社あげての一大減点レースとなってしまった。
◎部下の多くが目標未達なのに、「A」評価(富士通のなかでは2番目に高い評価)をもらうマネジャーが続出、管理職の9割がAなのに、会社の業績は赤字だった。
※他にも
・評価する部署に権力が集中する
・チームで成果をあげていた開発者たちが、手柄を求めて自分の目標に固執するようになった
……など、ろくなことがなかったのである。
→つまり、利益追求を目的として成果主義を導入したはずなのに、むしろ利益は減少してしまい、業界の評判も転落する結果となってしまったのです。それでは、利益追求が第一義ではない公務員の世界で、成果主義を導入しようとする意図は?これが、WEとまともにリンクしているのです。
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