事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ゴースト・スナイパー」The Kill Room ジェフリー・ディーヴァー著 文藝春秋

2015-05-22 | ミステリ

ディーヴァーの翻訳といえば池田真紀子さん。彼女の訳者あとがきによれば、この「ゴースト・スナイパー」が日本で出版された去年で、あの大傑作「ボーン・コレクター」が本国で出版されてから17年が経つという。

17年!

リンカーン・ライムのシリーズはそんなに長く続いていたのか。あの大傑作を読んでから、以降のすべてのディーヴァー作品につきあっている律儀で健気な(というか長っ尻な)読者として感慨深い。

感慨ついでに、久しぶりに第一作「ボーン・コレクター」The Bone Collector(今は文春文庫)を再読してみた。

あ然。

何も変わっていない(笑)。伏線、ひっかけ、いなし、逆転、見せかけの犯人、真犯人……に見えてやはり見せかけの犯人……またどんでん返し、そしてまた……

この最新作にしても(ちょっとネタバレになるけれど)狙撃は単独で行われるもの、という読者の思いこみを徹底して利用し、みごとにひっくり返してみせる。そのひっくり返し方に芸があるんだなあ。

特に今回は、“自分”というものを表現するのが微妙に下手な女性検察官が魅力的。アメリアと当然のようにぶつかり合うのが可笑しい。彼女を主人公にしたスピンオフが誕生するかもしれない。キャサリン・ダンスのように。

17年で変化があったとすれば、ライムのまわりの機器の進化と、ライムの身体が快方に向かい、逆にアメリアの膝が悪化していること。ラストに至って、リンカーン・ライムは以上のことを踏まえ、ある種の名探偵宣言を発する。そうか腹をくくったか。長年の読者として、とてもうれしい。

この宣言を経て、果たしてこのシリーズはどこへ向かうんでしょう。ま、やっぱりあまり変わらないんでしょうけどね。なにしろ次の作品のタイトルは「The Skin Collector」ですよ。期待しちゃうなあ。っていうかこれって思いっきり「羊たちの沈黙」を意識してるの?

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