十数年前、電車で山形から酒田に帰るときのことだった。ラッシュも終わり、客はまばら。山形市の大型書店でやっと見つけたあるコミックを袋から取り出し、読み始める。
「ぐ」
「ぐぐぐぐぐ」
わたしの発する声だ。あまりのおかしさに大声をあげて笑いたいのに、状況がそれを許さない。死ぬかと思った。このとき読んでいたのが、ギャグ4コマ漫画の金字塔、喜国(きくに)雅彦の「傷だらけの天使たち」(小学館)だったのである。
彼の漫画の特徴は、およそギャグ系には似つかわしくないオーソドックスな絵柄と、それに反比例するかのようなお下品きわまりない下ネタギャグの連発。脚フェチ・SM・スカトロ・短小・マザコン……たとえば
岡村:俺なあ、高校の卒業アルバム見ながら、一日に一人ずつ順番にズリネタにしてな、来年の春までには全員犯してやろうと思ったんだ。
宮本:スッゲェー!!壮大な夢じゃないかー!
岡村:しかし、三日目までは順調だったんだが、四人目の高崎がダメなんだ。どんなにヤラシイ事考えてもイカないんだー!!
宮本:高崎かー!?ああ、神はどうしてこんなにもイジワルなんだー!!
-病室にて。岡村はやつれ果てている-
岡村の母:三ヶ月も部屋にとじこもって、気づいた時にはもう……
岡村:宮本か……結局ダメだったよ。
宮本:バ、バカヤロー。こ、こんなになるまで……
-数日後、パンツを脱いだ宮本登場-
宮本:見てくれー、イッたぞー!高崎でイッたぞー!!見えるか岡村―!
岡村:お前、変態だよ。(絶命する)
……んまーお下品(笑)。今は小学館漫画文庫で簡単に手に入るのでぜひ読んでね。
ところで、そんな喜国の意外な一面をミステリマニアは知ることになる。以下次号。
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