「実録・共産党」篇はこちら。
ある日、日下部プロデューサーに梶芽衣子が「これを読んでくれない?」と一冊の小説を持ってきた。昭和56年のこと。
女優が小説を持ってくるのは、言うまでもなく「これをあたしの主演で映画化して」という含みである。少し前に出た本のようで、名前のみ知っている作家だったが、読み始めるとぐいぐい引き込まれる。
梶芽衣子はもちろん中心人物である松恵をやりたいという。しかし年齢的に違いすぎて、それは無理だ。
「他の役ならどれでもいいから」
頭を下げに下げたが、梶さんはあの役に固執してついに折り合わず、降りてしまった。
……作者は宮尾登美子、作品はもちろん「鬼龍院花子の生涯」。松恵の役は夏目雅子にまわり、エキセントリックな父親は仲代達矢が演じた。実はわたしは五社英雄監督がどうも苦手なので(宮尾登美子はもっと苦手)観ていません。
この大ヒット作は、最初に大竹しのぶと若山富三郎で企画されたが、岡田社長から
「そんな暗い話、どうするんや」
と言われてボツ。しかし日下部は単身社長室にのりこんで
「暗いと言いますがね社長、これは高知のやくざを仲代さんにやってもらうんです。こいつは半ば女衒みたいなやつで、自宅の一階に本妻、二階に妾を二人置いて、妻妾同居でやりまくるわ、よさそうな娘は自分で水揚げするわ、まあすごいんですわ」
「お前会議でそれ言わへんかったやないか」
「会議で『上行ったり、下行ったりして、やりまくる話ですわ』って言いにくいですよ」
「それ、やろう」
さすが岡田茂(笑)。東映の、というか日本映画のもっともいい加減にしてもっとも弾けた部分はこの人の真骨頂ですかね。いまの二代目ではそうもいかない。なんか岡田裕介って、不動産業とかの方に嗜好があるような気がしてどうも。なめたらいかんぜよ映画を。以下次号。
シネマの極道: 映画プロデューサー一代 価格:¥ 1,365(税込) 発売日:2012-12-21 |
演じて見せていたのかもしれないですけど、過剰にも
ほどというものが(笑)
それ以上に文芸作品としての宮尾登美子が苦手で(笑)
夏目雅子で思い出されるのは、東芝日曜劇場で萩原健一
と共演したドラマ。ちょっとびっくりするぐらい異様だったんですよ。
DVD出てるかなあ。