誰もが認める短篇小説の名手である村上春樹の「象の消滅」につづくグレイテストヒッツVol.2。
短篇にはどう“編む”かという楽しみがあることが理解できるお得な本だ。お値段も24篇の傑作が収められているのに1400円!
久しぶりに読む「ニューヨーク炭鉱の悲劇」(初めて読んだハルキ・ムラカミ)「蛍」(「ノルウェイの森」の原型)などに、違った味わいが感じられてうれしい。
初読のときよりもこちらも歳を重ねたので、なるほどこんなシンボライズをやってるわけか(「カンガルー日和」)、とも読めてきた。酒田が出てくる「品川猿」が、小説において固有名詞をどう使うかという実験をやってたんだな、とも。
それにしてもまとめて読むと(平明に見えてあまりに濃密なので一日に2~3篇しか読めませんでしたが)、登場人物たちの住む世界が、あまりにもの悲しいことに驚かされる。お得意の“損なわれてしまった人生”が、実は回復不能であることを前提にしているかのようだ。それでいて、ページを閉じれば静かに世界に立ち向かおうという気持ちにもさせられる。さすが、名手。
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