事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ルーティーンズ」長嶋有著 講談社

2021-12-07 | 本と雑誌

現在進行形、どころか心理の流れをスローモーション、それどころかストップモーションで語る長嶋有。そんな彼が、コロナ禍に生きる家族をこれ以上ないくらい微細に描く。

作家の夫と漫画家の妻。ふたりは2才の娘をあたたかく見守っているが、緊急事態宣言が生活を不穏なものに変えていく。

ほとんどエッセイの体裁(意識してのスタイルのはず)。異常な状況が次第に生活に侵食してくる、そしてそれを夫も妻も静かに眺めている。

読者の側の生活とこれほどシンクロしている小説もめずらしいだろう。すべてが小説であり、すべてが現実であり、すべてが詩であるかのような作品。コロナ小説として絶品。


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2 コメント

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Unknown (みこ)
2021-12-14 23:30:27
私は読みながらなぜか黒田三郎の詩を思い出していました。
なので「全てが詩であるかの様な」には共感します。

「東京ディストピア日記」もそうですが、
好きな作家さんの筆致でコロナについて読めるのは、
とても慰めになりました。
書いてくれてありがとうと言いたいです。
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そうなんですよね。 (hori)
2021-12-16 18:04:03
異常な状態に書き手と読み手が同居している
感じは確かに救いになります。
マスクのなかで、みんないろいろなことを
考えている……
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