(’03 ドイツ) ヴォルガング・ベッカー監督
アレックスの母、クリスティアーネは、夫が西側へ亡命して以来、祖国・東ドイツに忠誠心を抱いている。建国40周年を祝う夜、クリスティアーネは、アレックスがデモに参加している姿を見て心臓発作を起こし、昏睡に陥ってしまう。意識が戻らないまま、ベルリンの壁は崩壊、東西ドイツは統一される。8ヵ月後、奇跡的に目を覚ました母に再びショックを与えないため、アレックスはクリスティアーネの周囲を統一前の状態に戻し、世の中が何も変わらないふりをしようとするが…
ある状況を強引に設定してしまったために、その維持のために奔走しなければならない主人公。これは、コメディにおける典型のひとつ。しかしこの映画の強力さは、ベルリンの壁の崩壊を「無かったことにする」というその突拍子もないスケールにある。
あれから十数年、今となっては歴史の必然に見えるあの事件も、東ドイツ側にとってはやはり苦さも含んだ出来事であることがわかる。同じ街なのに、分断された40年の間にアクセントまで違ってしまった東西両ベルリンの軋轢と社会主義の敗北は、この、ドイツにおける観客動員の記録をつくった一種のホームドラマによって大過去に決定づけられた。母親の眼前でレーニン像がヘリコプターで運び去られるシーンは、さまざまな意味で名場面だと震えがくるほどだった。
しかしこの作品のもうひとつの取り柄は、東ベルリンの住人が「こんな形の統一だったらよかったのに」と願うファンタジーを母親に提供し続ける息子の健気さが、自国に不利な情報を隠蔽する社会主義国(に限らないが)にシンクロしてみえてくる仕掛けにある。
実は息子の努力にもかかわらず、母親はうっすらと感づいているというホロリとさせるエンディングと、犯罪的に可愛いヒロインも含め、いい映画だと自信を持っていえる。
画像はそのヒロインのチュルパン・ハマートヴァ。どうしてロシア人ってこんなにかわいいのだっ!(若いうちはっ!)
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