アルトマン三昧シリーズはこちら。
ロバート・アルトマンにとって、映画監督であることは、幸不幸や仕事という範疇を超えて、ごくごく自然なことだったのだと思う。業界人の尊敬を一身に集め(ハリウッドのボスからは嫌われ)た彼は、妥協しないその姿勢から、常に製作費の問題に苦しんだ。それでもなお、このドキュメンタリーに数々のホームムービーが挿入されているように、彼はカメラを回し続けた。
キャリアのスタートは恵まれたものではなかった。嘘八百をならべて零細の映画会社にもぐりこんで記録映画を撮りまくり(おかげで機材にやたら詳しくなり)、テレビ業界で延々とB級C級のドラマを撮り、そのためにメジャーデビューは大幅に遅れることになった。
転機はもちろん「M★A★S★H」。朝鮮戦争(もちろんベトナム戦争への皮肉をこめている)の陸軍野戦病院を舞台にしたこのコメディが、まさかのカンヌ映画祭グランプリ。ここから怒濤の展開になるものの、業界の常識を次々に覆したために、ハリウッドで撮ることがかなわなくなっていく。
しかし彼の天才を、映画人はきちんと評価している。愛弟子ポール・トーマス・アンダーソンをはじめ、そうそうたる面々が彼について証言していて(「マッシュ」のホットリップス役でフルヌードになったサリー・ケラーマンの登場はうれしかったなあ)、みんな彼のことが大好きであることがうかがえる。
そして彼の作品が次々にインサートされてうれしい限り。
わたしのオールタイムベスト映画である「ロング・グッドバイ」
群像劇ならお手の物であることを証明した傑作「ナッシュビル」
異様な長回しで驚かせた「ザ・プレイヤー」のあの場面はさすがに早回しで(笑)
究極のファッションとはこれだとモデルたちを全裸にしてみせた「プレタポルテ」
そしてあの「今宵、フィッツジェラルド劇場で」……
苦労を重ねたアルトマンだけれど、美しい妻とたくさんの子ども、そして友人たちに囲まれて逝くことができた。もちろんもっと映画を撮ってほしかったけれど、まずは、もって瞑すべしだろう。映画監督とは幸せな職業だ。作品と名声が永遠に生き続けるのだから。
シルビアばかりで・・・(*'ω'*)