映画化された松本清張原作ものでは、なんといっても「砂の器」が、その興行成績で群を抜いている。作品の評価なら「張り込み」が上かとも思うけれど、小説単体の評価では「点と線」そしてこの「ゼロの焦点」が代表作といえるかもしれない。
映画だけでなく、テレビのサスペンスものでも【清張原作】はいまだに特級ブランド。その理由は、なによりも松本清張が読者(視聴者、観客)というものを知り抜いているからだろう。とにかく面白い。
人を突き動かす動機は欲と嫉妬だ、と規定した清張の人間観は、そう言ってはみもふたもないけれども彼の人気を考えると当たっているはず。
特に、エリートであると彼に映った文壇の(特に純文学系の)作家たちに切歯扼腕していた清張の、くどいくらい人間の陰の部分をさらけ出す手法は、高度成長がはらんだ日本の負の部分によく似合った。
さて「ゼロの焦点」。久我美子が可憐な(そしてラストにいたって意外な強さを見せる)若妻を演じた61年版が有名。確かにいい映画でした。
でもわたしが先にふれたのは71年のNHK銀河ドラマ。十朱幸代が若妻、失踪した夫が露口茂のバージョン。夫婦ってもろいものよね、としみじみいたしました。思えばいやな中学生。
そして2009年。松本清張生誕百年を記念し、おそらくは電通が主導して再映画化した「ゼロの焦点」には、「砂の器」「霧の旗」につづいてわからない部分があるのでした。「わからない」シリーズ恒例、すべて役名は俳優名でいきます。
PART2につづく。