「はい、M小学校・事務のホリでございます。」これでもか、というぐらいビジネスっぽくわたしは電話に出る。
「あ、あ、あのぉ。K大の……飛島で……」まもなく行われる学年宿泊体験でボランティアをしてくれるK大生だろう。“社会人としての電話のかけ方”がまだまだである。もしもどこかの会社からこんな電話が来たら、不快とか怒るより先に、不安が先に立つだろう。この会社大丈夫なのかな、と。
しかしよくよく考えてみると、いつの間にわたしたちは電話のマナーを身につけ、日々実践するようになったのだろう。「いつもお世話になっ」てもいない相手に、平気で「いつもお世話になっております」なんてことを条件反射的に口にしたり、一日付を“いっぴづけ”と読むようになったのは何でだ?
「オトナ語の謎」は、おなじみのサイト「ほぼ日刊イトイ新聞(略して“ほぼ日”)」で人気を誇った同名のコーナーを書籍化したもの。心にもないことをお互いに平気で言える社会人・会社人という存在の不思議さを探ろうという糸井重里のコンセプトを超え、卒業間近の学生たちが本気で辞書がわりに使用している。わたしにしたって理解不能なことばはいくつもあった。たとえば「まえかぶ・あとかぶ」「リスケ・オンスケ」……
しかしこのオトナ語、要するに隠語として仲間意識を醸成するか、あるいは逆に身内以外を排除する機能をもっている。と同時に、きつい世間を渡る過程で、できるだけ互いの神経を痛めないためのツールでもあるのだろう。どうとでもとれるニュアンスに過大な力点を置いているわけで、日本および日本人の偉大なる(半分は皮肉)発明品と形容できなくはない……と弊社では考えているところでございます。兄弟本「言いまつがい」との併読はマストと手前どもはプレさせていただきます!
「今現在」
今は現在に決まってるだろう!という冷静な突っ込みをよそに、全国のオフィスや現場でくり返されている不思議な日本語。
「いちばんベスト」
オトナ語に文法を求めてはダメだ!意味を求めるより、感じるんだ!
「基本オーケー」
そういうふうに言われた場合、オーケーではないということである。
……本文より
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