事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「の・ようなもの のようなもの」(2016 松竹、アスミック・エース、角川、ぴあ)

2017-07-19 | 邦画

森田芳光が亡くなって、もう6年たつ。決して巨匠にならず、あくまで才人、鬼才として映画界を突っ走った彼の作品には、独特のスタイルがあった。

①画面から、いい意味で熱が奪い去られていて、クールな肌合いが強調されている。「ときめきに死す」の登場人物たちが「涼しいですね」と何度もやりとりしているのはその象徴。

②セリフに微妙な“間(ま)”と奇矯なアクセントを与えて異世界を構築する。「間宮兄弟」の中島みゆき、「悲しい色やねん」の森尾由美が代表。

……その萌芽は、メジャーデビュー作である「の・ようなもの」にすでにあった。主演の伊藤克信の栃木弁、尾藤イサオとのかけ合い、そしてラストで延々と続く道中づけシーンは、映画と落語の幸福な融合だった。わたしのオールタイム邦画ベストスリーに確実に入ります。

その「の・ようなもの」の35年ぶりの続篇がつくられるなんて、生きててよかった。

森田組のスタッフ、キャストが集結して、まるで同窓会。主演は「A列車で行こう」の松山ケンイチと、なんとなんと伊藤克信が同じ志ん魚(しんとと)役で。うれしい、うれしい。

他にも「家族ゲーム」の宮川一朗太、「愛と平成の色男」の鈴木京香、「おいしい結婚」の三田佳子、「メイン・テーマ」の野村宏伸(彼は薬師丸ひろ子の相手役としてこの映画でデビュー。彼を推したのは森田だったとか)など、泣けるキャスティング。

特に、前作でもみごとな師匠っぷりだった尾藤イサオが、35年ぶりなのにまったく変わっていなくて呆然。彼が歌うテーマソングも同じ曲を使用。はすっぱな娘を演じて北川景子もいい。森田芳光も“向こう”でクールに喜んでくれているのではないでしょうか。あーしかしわたしはどこの馬の骨ともしれない若造の映画に、ソープ嬢として出演してくれた秋吉久美子にふたたび出てほしかった。

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2 コメント

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Unknown (月の罠)
2017-07-20 22:21:26
昭和56年夏に渋谷の東急名画座で公開されたとき、この映画は入場料995円だった。1000円出して5円(ご縁)がありますように。俺が初めて見たのは翌年の1月、池袋の今はない池袋文芸地下で。併映は藤田敏八の「赤ちょうちん」。それで、この映画にはまった。というか森田にはまった。「噂のストリッパー」も「ピンクカット太く愛して長く愛して」も観て、昭和58年に「家族ゲーム」が有楽町のスバル座で公開されるときは、朝一回だけ、「の・ようなもの」特別上映というので、駆けつけた。ほかにも思い出せるだけで高田馬場パール座、自由が丘武蔵野推理劇場、大井武蔵野館なんかで観たな。主題歌「シー・ユー・アゲイン 雰囲気」のドーナツ盤は今も持ってる。このころの森田が勢いあって一番良かったな。
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そうでしたっ! (hori109)
2017-07-20 23:11:31
995円が売りでしたね。
わたしが見たのは三軒茶屋の映劇か東映だったかな。
もちろん森田の最高傑作は「それから」でも
「家族ゲーム」でもなく、「の・ようなもの」なのは
確信していますが、脚本担当の「ウホッホ探検隊」
もよろしく。
根岸吉太郎もあの頃よかったなあ。
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