かつてスティーブン・スピルバーグが「Watch The Sky(仮)」という映画を極秘裏に製作していたとき、彼は取材にたいして「いま、電気の雲をつくっているんだ」とうれしそうに語っていた。完成したその作品こそ「未知との遭遇」Close Encounter of The Third Kind(第三種接近遭遇)であり、「スター・ウォーズ」でボロ儲けし、その金でILM(Industrial Light And Magic)をつくったジョージ・ルーカスとともに、特撮技術を革命的に変えたのだった。彼らは、自分の作品が業界全体を活性化することに意識的ではあったろうけれど、それよりもまず、技術的なイノベーションに淫してしまうのだろう。
同じことがジェームズ・キャメロンにも言える。大バクチだった「タイタニック」を興行的にも作品的にも(わたしはちょっと懐疑的)成功させた彼は、その成功をバックに3Dで映画というメディアを変えてみせると豪語。でもわたしはこう思っている。電気技師の息子であり、メカフェチでもあるキャメロンは、撮影技術の変革自体が楽しくて楽しくて仕方がないのだろうと。
そんなにひねくれずに考えれば、いくら大監督でも三作つづけてコケれば撮れなくなってしまう薄情でシビアな映画界で、大金をつかんだら業界全体のために投資するべきだ、とする気風がハリウッドにはまだ残っているのかもしれない。
「タイタニックから12年!」と騒がれているけれど、わたしにとってキャメロンとはなんといっても正続「ターミネーター」と「エイリアン2」の人だ。
思い起こしてほしい。アクションにつぐアクションで観客を疲労困憊させたあと、さらに“もうひと押し”するサービス精神こそ彼の真骨頂。わたしが「アバター」の初日に映画館にかけつけたのは、あの興奮を味わいたかったからと、実はわたしも技術革命なるものが大好きだからだ。
以下次号。
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