ちょっと話は複雑になるけれども、この映画の成り立ちは不幸そのものだった。
オリジナルのアンリ=ジョルジュ・クルーゾー版はイブ・モンタン主演で名画の評価が確立している(主役の名前がマリオとルイージなので、スーパーマリオはそれをいただいたという説あり。当たっていると思います)。
それを「フレンチ・コネクション」「エクソシスト」で監督としての名声をほしいままにしたウィリアム・フリードキンが再映画化する……前にも言いましたが、わたしは高校生のころ、期待される作品のタイトルを授業中にノートに書きつけるという不届きな生徒だったので、もちろんこの作品「Sorcerer」(魔術師、の意)には期待をこめてひたすら書いてました。
ところが、全米公開では大コケ。そのために日本などの他国では30分以上もカットされたバージョンが公開され、評判も散々、わたしも「んー、こんなもんだったのか」とのちにビデオで見て思ったのだった。
しかしフリードキンはその評価がよほど腹にすえかねたのだろう。複雑な権利関係をクリアし、自分が思うとおりのバージョンで再公開。で、絶讃の嵐だと。
こりゃ、見なきゃダメでしょ。鶴岡まちなかキネマでは一週間限定公開なので今日見るしかない。館内には同じような意図のお客さんがいっぱい。庄内の映画オタク大集合って感じ。
オリジナル(クルーゾー版ね)にはなかった“橋”の場面はやはりすばらしい。グロテスクなトラックのフロントマスクが、現地の神のように見えるあたりの仕掛けも泣かせる。
ロイ・シャイダー(次第に顔に死相がただよってくる)たちに襲い来る危機はひっきりなし。それ以前に、彼らがなぜこの生き地獄に来なければならなかったのかのたたみかけがいい。あの殺し屋はなぜこの危険なミッション(ニトログリセリンの運搬)に参加したのかという疑問などささいなことでした。
フリードキンが主張する、これが彼の最高傑作だかは疑問だけど、心臓に悪い2時間だったことは確か。へとへとに疲れました。ラストは今回初めて公開されたとか。フレンチ・コネクションそのものじゃん。なんでこれをカットするかなあ。音楽はタンジェリン・ドリームですっ!