事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「夜去り川」 志水辰夫著 文藝春秋

2012-05-26 | ミステリ

Yosari 「あきらめていただくしかありません。もともと通りすがりの人間です。お知り合いになれてこよなく仕合わせでしたが、わたしどもにその先はありません」

主人公は渡し船の船頭。しかしなにやらわけありの様子。何かを、待っているのだ。

彼がいったい何を待っているかは中盤まで明らかにされず、日々の生活の描写に終始する。ところが、これがいいんですなあ。

志水ハードボイルドのことだから当然主人公はやせ我慢をしている。しかし武家社会の終焉を予感するほどクレバーでもある。幕末という設定が絶妙。そのうえでなおかつ、上のようなセリフを吐くあたりの臭さが泣かせる。

もちろん奇跡のようにいい女たちが登場し、主人公は彼女たちのために意地を張り、何かを失い、そして何かを得る。渋い。

夜去り川 夜去り川
価格:¥ 1,700(税込)
発売日:2011-07
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする