垣谷美雨著『あなたの人生、片づけます』(双葉文庫か36-06、2016年11月13日双葉社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
社内不倫に疲れた30代OL、妻に先立たれた老人、子供に見捨てられた資産家老女、ある一部屋だけ片づけられた部屋のある主婦……。『部屋を片づけられない人間は、心に問題がある』と考えている片づけ屋・大庭十萬里は、原因を探りながら汚部屋を綺麗な部屋に甦らせる。この本を読んだら、きっとあなたも断捨離したくなる!
片づけ屋・大庭十萬里(とまり)が、4人の片付けられない事情を探り、自ら解決するように導く事件簿だ。
ケース1 清算(春花)
32歳独身、大企業勤めのやり手の高給取りで、40平米の広い1LDKに住む。しかし、これがすさまじい汚部屋。精神状態を心配した母親からの依頼で、部屋だけでなく人生そのものも整理してくれるという十萬里が動く。部屋を訪れ、結婚を予定しているかのような家具、冷蔵庫を備えていて、十萬里が探ると、決まった相手・悟史がいるというが、41歳で、5年も付き合っているという。十萬里さんの導きで、春花は言いたくても言えないストレスに気付き、……。
ケース2 木魚堂(国友展蔵)
木魚制作の木魚堂の職人・国友展蔵は妻・美津子を亡くし、まだ60代だが家事能力ゼロのため、離れて暮らす娘・風味子が通ってなんとか家事をしている。風味子の依頼で十萬里子が訪れると、やってきた風味子がイライラしている。木魚堂は自分が原因だとはまったく思っていない。……
ケース3 豪商の館(泳子)
子供たちが去って田舎とはいえ豪邸に一人住み、けして来ることのない「いつか」のために物をため込む78歳の三枝泳子。東京に住む睦美からの依頼で十萬里が豪邸を訪れる。1階にも、2階にも広い部屋が4つある。点検すると掃除は行き届いているが、予備の物、いざという時の物など圧倒的に荷物が多い。
使える物であっても特別な物でないかぎり、骨董品屋やリサイクルショップでも引き取らないと分かった。
ケース4 きれいすぎる部屋(麻実子)
開かずの間以外は汚部屋で、娘の沙耶加、菜々美と、夫がいるのに家事を放棄している崩壊家庭の主婦・池田麻実子。心配した姑が十萬里に申し込んできた。
本作品は2013年11月双葉社より単行本刊行。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
十萬里は部屋が片付けられない客の理由を探り、客が自分で悟って、前を向いて片付け始めるように導くというテーマが明快で、話が分かりやすく、読みやすい。構成が単純すぎると言えば言えるのだが。
十萬里(とまり)とは変な名だと思ったら、片づけコンサルタントのこんまり(近藤麻理恵)のマネ?
しかし、つい過去を思い出して懐かしむ老人の心を、あまりにも簡単に前に向かせるのは、不自然に感じる。私は、若い頃は後ろを振り返るのが大嫌いだったのに、たいした未来はあり得ず、過去の思い出を反芻して懐かしむことが多くなっている。