hiyamizu's blog

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恩田陸『木洩れ日に泳ぐ魚』を読む

2023年10月27日 | 読書2

 

恩田陸著『木洩れ日に泳ぐ魚』(文春文庫お42-3、2010年11月10日文藝春秋発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

舞台は、アパートの一室。別々の道を歩むことが決まった男女が最後の夜を徹し語り合う。初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿――共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始める。濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは。不思議な胸騒ぎと解放感が満ちる傑作長編! 解説・鴻上尚史

 

こう始まる。

たぶんこれは、一枚の写真についての物語なのだろう。

むろん、ある男の死を巡る謎についての物語でもあるし、山の話でもあるはずだ。そして、一組の男女の別離の話という側面も持っている。

そして、

 僕たちは今夜、最後の一晩をこの部屋で過ごし、明日はめいめい別の場所へと出て行くことになっている。

 

以下、同棲してきた彼(ヒロ、高橋千浩)と彼女(アキ、藤本千明)の、荷物がなくなったアパートの一室での最後の一晩の語り明かしが最後まで続く。語り手は章ごとに男と女の2人が入れ替わる。

 

語るにつれ、不穏な空気がますます濃くなり、そして次々と、幾重にも重なる謎のベールが一枚一枚剥がれていく。

 

男はこれまで同居していた目の前の女とは別の女とこれから暮らすことにしている。

男は女が、女は男が、あの男を殺したのではないかと疑って、今夜中に白状させようと思って、言い出すタイミングを計っている。

男と女は兄妹、双子? 恋仲? あの男は男と女の何? ……。

 

 

単行本:2007年7月中央公論新社刊

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

特異な状況設定の中での男女の心理戦。同棲を解消する男女が、最後の夜を語り明かす。

互いに相手が殺人を犯したと疑いながら、兄妹でありながら、愛し合いながら、神経戦を戦う舞台劇か、実験小説か?
好みがわかれる小説だ。

 

割と私の好みの小説ではあるが、話が二転三転しすぎるので、読みにくい。信頼できる第三者の語り手が欲しい。

 

恩田陸の略歴と既読本リスト

メモ

 

女は過去を断ち切ることの出来る生き物。……むろん、過去を引きずってしまう女もいるし、私の中にもそういう女はいる。…私の場合、普段はそういう女には別室にいてもらう。…たまにリビングに読んで、思う存分自己憐憫に浸る。女には自己憐憫という娯楽があるのだ。(p39)

 

コメント
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