辻堂ゆめ著『サクラサク、サクラチル』(2023年7月29日双葉社発行)を読んだ。
双葉社による紹介
「絶対に東大合格しなきゃ許さない」――両親の熱烈な期待に応えるため、高校三年生の高志は勉強漬けの日々を送っていた。そんなある日、クラスメートの星という少女から、自身をとりまく異常な教育環境を「虐待」だと指摘される。そんな星もまた、自身が親からネグレクトを受けていることを打ち明ける。心を共鳴させあう二人はやがて、自分達を追い詰めた親への〈復讐計画〉を始動させることに――。教室で浮いていた彼女と、埋もれていた僕の運命が、大学受験を前に交差する。驚愕の結末と切なさが待ち受ける極上の青春ミステリー。
高校3年生の染野高志は、東大出身のエリートサラリーマンの父と専業主婦の母を両親に持つ。高等部に上がるまでは抜きんでて優秀で親の期待を一身に背負っていた姉が、東大受験に失敗し、精神に破綻をきたしてからは、代わりに今一つだった高志に期待が集まった。東大合格を至上命題として、勉強時間、睡眠時間、食事など生活のすべてを親に管理されていた。さらに、少しでも親の気に障ることがあると暴力を振るわれた。
クラスでまったく目立たない高志が、パニック発作を起こしてトイレに駆け込み、しばらくして出て行くと、同級生ではっとするほど端整で無表情の星愛璃嘉(えりか)がなぜか居て、「染谷さ、大丈夫?」と声をかけられる。
高志は星とときどき話し合うようになり、自分の生活は普通ではなく虐待だと、星から指摘されて、気付いていく。
一方、星は母子家庭で、母はほとんど働かず、家事もしないで、しかも生活保護を拒否しているため、星は家事の他にバイトして、その収入だけの貧しい生活を送っていた。高校もたまにしか出席しなかった。星は、母親は自分がいないとダメだと思っていて、大学進学もあきらめている。しかしその実、親からは愛されていないと高志は指摘する。
そして二人は復讐計画を立てて、………。
初出:「小説推理」2022年8月号~2023年3月号
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
ともかく冗長で長い。虐待のシーンが多く、執拗で、読む人の気持ちを考慮して欲しい。親の説教が長く、両親がバカすぎて嫌になる。私は、急いで、飛ばし気味に読んだ。ともかく読ませるのは著者の文章力だとは思う。
ようやく1/3(p114)に至り、「世間ではこれを虐待という」という言葉が出てくる。
約4割弱の時点で(p132)、復讐計画という言葉が登場するが、最後までその計画のヒントも出てこない。