hiyamizu's blog

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筒井康隆『短編小説講義』を読む

2021年03月01日 | 読書2

 

筒井康隆著『短編小説講義 増補版』(岩波新書(新赤版)1792、1990年6月20日発行、2019年8月22日増補版発行)

 

表紙裏にはこうある。

「短篇小説を書こうとする者は,自分の中に浸みこんでいる古臭い,常識的な作法をむしろ意識して捨てなければならない」。その言葉どおりに数かずの話題作を生み出してきた作家が,ディケンズら先駆者の名作を読み解き,黎明期の短篇に宿る形式と技法の極意を探る。自身の小説で試みた実験的手法も新たに解説する増補版。

 

目次

1 短篇小説の現況

形式上の束縛を嫌い、より自由に書こうとして生まれた文学形式こそが小説だった。しかし、とくに日本では
短編小説はお稽古事化していて、カルチャーセンターなどで短編小説作法として教えられている。

近代小説というジャンルが確立していなかったときの、現今の短編小説作法の枠から大きくはずれたものを紹介する。

2 ディケンズ「ジョージ・シルヴァーマンの釈明」
3 ホフマン「隅の窓」
4 アンブロウズ・ピアス「アウル・クリーク橋の一事件」
5 マーク・トウェイン「頭突き羊の物語」
6 ゴーリキー「二十六人の男と一人の少女」
7 トオマス・マン「幻滅」
8 サマセット・モームの短篇小説観

9 新たな短篇小説に向けて

ぼくの理想の短編小説とは……孤高に存在し、誰にも真似られることのない短編小説。そのためにはその独特形式と技法がそのテーマや内容によってしか生かされず、他のいかなるものにお応用のきかない短編小説。それがぼくの理想である。(p150)


10 ローソン「爆弾犬」
11 筒井康隆「繁栄の昭和」
⦅増補版で追加⦆

あとがき

増補版あとがき

 

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?  最大は五つ星)

 

お勧めの短編小説作法を求めているわけではないのだが、ただ従来にない新しい形というだけでは、基礎的小説作法も知らないド素人ははぐらかされた感が強く残るだけだ。

筒井さんは、「最も新しい小説を書くためには、過去の小説、現在の小説を大量に読み、飽きあきしなければならない」と言うが、そんなことできない。そもそも、私は新しくて面白くない小説より、新しくなくても面白い小説を読みたいのだ。ただ、昔々、カフカの『変身』を読んだとき、変な小説と思ったが、芋虫になったのにあっさり受け入れてしまうなど変に面白かった。同じような面白味だけだと飽きるので、新しい面白さを教えてくれる小説が確かに最高なのだろう。

 

例題として提示されている短編小説が面白くないし、上手とも思えない。枠を外れている例として挙げられているのだが、それにしてももっと他になかったのだろうか。

 

 

筒井康隆(つつい・やすたか)
1934年大阪に生まれ。同志社大学文学部卒業。

主な著書、『時をかける少女』『大いなる助走』『虚人たち』『文学部唯野教授』『虚航船団』『旅のラゴス』『不良老人の文学論』『創作の極意と掟』など。

 

 

世故(せこ)い

 

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