hiyamizu's blog

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ジョン・ル・カレ『スパイたちの遺産』を読む

2021年03月05日 | 読書2

 

ジョン・ル・カレ著、加賀山卓朗訳『スパイたちの遺産』(ハヤカワ文庫NV1460、ル41-26、2019年11月15日早川書房発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

引退生活を送るピーター・ギラムは、かつて所属していた英国情報部から呼び出された。冷戦期の射殺事件の遺族が、親の死亡原因は英国情報部、そしてギラムとその師スマイリーにあるとして訴訟を起すというのだ。厳しい追及を受け、ギラムはやむなく極秘資料を渡すが……。やがて明かされる衝撃の事実とは? 名作『寒い国から帰って来たスパイ』『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の続編! 解説/上岡伸雄

 

ピーター・ギラムは、かって英国情報部の組織“サーカス”のチーフであるコントロールのもと、ジョージ・スマイリーの下で活躍していたが、老齢となりフランス・ブルターニュの村で引退生活を送っていた。

 

ある日、英国情報部からロンドンに呼び出され、東西冷戦時の有効な情報源確保である<ウィンドフォール>作戦⦅『寒い国から帰って来たスパイ』の中で英国情報部員アレック・リーマスが遂行した作戦⦆について詳細に問いただされた。リーマスと、その恋人エリザベス(リズ)・ゴールドがベルリンの壁で東ドイツ側に射殺され、リーマスの息子・クリストフと、エリザベスの娘・カレンが、その死亡責任は英国情報部にあるとして訴訟を起こそうとしている。

 

<ウィンドフォール>作戦の資料は消えていて、スマイリーも行方知らずで、ピーターは責任を問われそうで、厳しい追及を受ける。追及担当は、英国情報部の弁護士で“歴史”担当のローラと法務課長のバニーだ。パスポートを取り上げられ、追い詰められたピーターは<ウィンドフォール>専用のロンドン市内の隠れ家セーフハウス、通称スティブルズの場所を教えざるを得なかった。いまだにそこにはミリー・マクレイグが住んで、管理していた。そして、徐々に……。

 

当時英国情報部は、ジョージ率いる<隠密>グループと、後に二重スパイを分かるビル・ヘイドン率いる<委員会>は激しく権力を争っていた。

<メイフラワー>=カール・リーメック:英国情報部東欧ネットワークの中心人物。

<チューリップ>=ドリフ・ガンプ:同ネットワークの一員の女性。息子はグスタフ。

エマヌエル・ラップ:元シュタージ高官。ドリスの上司。

ハンス=ディーター・ムント:元シュタージの副長官。フィードラに対抗。

ヨーゼフ・フィードラ:元シュタージ対敵諜報課長。ムントに対抗。英国情報部の情報源。

タビサ:ピーターの弁護士

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

さすが、実際に英国情報部のスパイだったル・カレの作品だ。絵空事でなくリアル感が充実。その分、裏切り、だまし合いなど複雑怪奇な人間関係の糸がからまっていて、ややこしい。会話も、裏の裏の読み合いで、面白いのだが、読むのにくたびれる。
スパイ物だが、撃ち合い、取っ組み合いも少なく、リアルだ(想像するに)。

 

ちなみに私はル・カレの作品を読むのは初めてで、関連の前作の知識がないので、本作品も理解しにくい点が多く、もどかしい思いをした。

 

 

ジョン・ル・カレ John le Carre (1931年10月~2020年12月)

イギリスのドーセット州生まれ。オックスフォード大学卒業後、イートン校で教鞭をとる。東西冷戦期にイギリスの諜報機関MI5に入ったが、MI6に転属し、旧西ドイツのボンにイギリス大使館の二等書記官として赴任、その後ハンブルクの総領事館に勤務した。

1961年に『死者にかかってきた電話』で小説家としてデビュー

1963年、第三作の『寒い国から帰ってきたスパイ』でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長篇賞と英国推理作家協会(CWA)賞ゴールド・ダガー賞受賞
スマイリー三部作『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』(1974年)、『スクールボーイ閣下』(1977年、CWA賞ゴールド・ダガー賞受賞)、『スマイリーと仲間たち』(1979年)が人気。
最新作(最後作)は2020年7月『スパイはいまも謀略の地に』


加賀山卓朗(かがやま・たくろう)
1962年生、東京大学法学部卒、英米文学翻訳家

訳書、ル・カレ『地下鉄の鳩』、シズマン(共訳)『ル・カレ伝』

 

 

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