hiyamizu's blog

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天藤真『大誘拐』を読む

2020年11月09日 | 読書2

 

天藤真著『日本推理作家協会賞受賞作全集 37  大誘拐』(双葉文庫て02-1、1996年5月20日双葉社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

紀州随一の超大富豪・柳川家の女主人とし子刀自が、「虹の童子」と名乗るものに誘拐された。要求された身代金はなんと百億円! しかも犯人は、金と引換えの場面をテレビで中継せよと捜査陣を煙に巻く。いよいよ身代金受渡しの場面となるが、前代未聞の大事件はさてどんな結末に?

 

スリ師・戸並健次は足を洗い社会復帰を果たすために誘拐して身代金を得ようと、雑居房で知り合った大柄な秋葉正義と、オッチョコチョイの三宅平太を仲間にして、現地に乗り込んだ。

狙いを定めたのは紀州一の大富豪・柳川家の当主で、地域の住民に敬愛されている82歳の女主人・柳川とし子刀自(とじは敬称)。とし子は小間使い役の吉村紀美をお供を連れて毎日持山をあちらこちら山歩きしていた。

事件を追う県警本部長の捜査一課長は鎌田浩一で、本部長の井狩大五郎は大奥様とし子を大恩人としていた。

 

柳川国二郎:とし子の家兄(長男)63歳/  可奈子:次女/  大作:四男49歳、画家/  英子:末娘、牧師の妻/  串田孫兵衛:老執事/  安西:運転手/ 

くーちゃん:柳川家のメードを通算20数年勤めた。今は畑と山林を経営。時々隣村の邦子が手伝いにくる。

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

書かれた年が1979年、40年前だ。古めかしいところも当然あり、いかにも時代がかった感じを受ける場面も多いのだが、それにしては面白く読めた。誘拐のチャンスを伺う様子からしっかり描きもまれているし、身代金の受け取りの仕組みも多少しつこいが面白い。

漢字カタカナ文が4頁にわたって続く部分があり、とてもきちんと読めない。

100億円の身代金、全国へのTV中継など大掛かりな話だが、絵空事感がたっぷりで芝居がかっているのは、いいような、悪いような。

登場人物に真の悪者がいないので、全体にゆるめの話で、牧歌的だ。ユーモア・ミステリーと言ったところか。

 

天藤真(てんどう・しん)

1915年~1983年。東京生れ。東大国文科卒業後、同盟通信記者。満州より帰国後、農業の傍ら執筆。
1962年、旧〈宝石〉誌に投じた「親友記」が宝石賞に佳作入選、作家活動を開始する。
同年『陽気な容疑者たち』が第8回江戸川乱歩賞候補
1964年『鷲と鳶』で宝石賞受賞
1979年本書『大誘拐』で第32回日本推理作家協会賞受賞。

その他、『皆殺しパーティ』『殺しへの招待』

寡作ながらユーモアと機智に富んだ文章、状況設定の妙と意表を衝く展開が身上。

 

 

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