hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

呉座勇一『日本中世への招待』を読む

2020年11月27日 | 読書2

 

呉座勇一著『日本中世への招待』(朝日新書749、2020年2月28日朝日新聞出版発行)を読んだ。

 

宣伝文句は以下。

現代でも話題になる結婚や離婚、誰もが不安を抱く病気や葬儀、それに伴う遺産相続、将来を見据えての教育体制……。それらは、中世の日本でどのように行われてきたのか? その他、年始の挨拶やお中元、引っ越しから旅行まで、中世の日本人の習慣を詳細に読み解く一冊。

 

はじめに

人生の歴史学
   中世の家族
   中世の教育
   中世の生老病死  産屋/出産/老い/医療/葬送など

交流の歴史学
   宴会/誕生会/接待/旅行/引っ越し/悪口/読者など

<付録> さらに中世を知りたい人のためのブックガイド
    12冊紹介

呉座勇一(ござ・ゆういち)
1980年(昭和55年)、東京都生れ。東京大学文学部卒業。同大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。専攻は日本中世史。現在、国際日本文化研究センター助教。

2014年『戦争の日本中世史』で角川財団学芸賞受賞

著書は、『一揆の原理』(ちくま学芸文庫)、『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』『戦争の日本中世史』(新潮選書)、『日本中世の領主一揆』(思文閣出版)、『陰謀の日本中世史』(角川新書)

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

私は呉座さんを朝日新聞土曜別冊「be」のコラムで知った。博識だがわかりやすい語り口、リベラルな姿勢に好感を持った。本書はこのコラムが発端として書かれた。

中世の貴族、英雄の話でなく、庶民も含めた生活の実情を語る視点が呉座さんらしくすばらしい。だいぶ昔に共産党系の歴史学者が、時代の主役は庶民だとして、庶民の歴史に着目した著書がいくつか出版され、それもありだなと思った記憶がある。この本は庶民だけでなく、支配者層も含めた生活ぶりを、公平な学者の視点で紹介している。

 

中世というと、ヨーロッパのイメージに引っ張られて保守的、支配的と思ってしまうが、この本を読むと、意外と男女平等に近く、自由な風潮もあったと分かる。保守の人も、明治以降だけが歴史ではないと自覚して、中世、古代のことも勉強して頭に入れて欲しい。

 

以下、メモ

 

  • 日本史学における「中世」という時代区分は、おおむね平安末期から戦国時代までを指す。
  • 中世史を真に探求しようとするならば、英雄の話、戦いだけでなく、中世人の生活、さらには心性・価値観まで知る必要がある。
  • 古代はかならずしも男系優位ではなく「双系制社会」だった。夫婦は男性側か、女性側か、どちらに家で生活するか決まっていなかった。子供にの財産分与も男女平等だった。
    政治的地位継承にも母方血統が重要で、母親も皇族の方が天皇になれる確率が高かった。天智天皇の娘は4人とも、弟の大海人皇子(後の天武天皇)の后になっている。
  • 古代においては、家よりも氏が中心だった。氏は氏人(うじびと)を構成員とする同族集団。古代人は自分たちを神の末裔と考えていたので、氏単位で共通の祖先にあたる共通の神・氏神を祀った。氏のトップを氏上(うじのかみ)という。
    蘇我氏、葛城氏など氏の連合体としての政権から朝廷は天皇と官僚による律令国家へ脱皮した。
  • 中世百姓は男系で嫡継承される家が成立するのは貴族や武士よりずっと遅く、15から16世紀になってから。中世前期の百姓の財産は夫婦別財で、夫婦は「夫婦別氏・夫婦同名字」だった。
  • 鎌倉時代・南北朝時代の一般武士の識字能力は非常に低かった。子弟らに財産を譲渡するための譲状の自筆のものはほとんど平仮名で書かれている。
  • 従来の儒学は事実上注釈の研究だった。そういう訓詁学はやめて大元の根本部分を学ぼうと生まれた宋学の代表が南宋の朱熹が創設した朱子学。
  • 仏教の開祖・ゴータマ・シッダッタ(釈迦)は人間の本質的な苦しみは「生老病死」の4つだと説いた。これが「四苦八苦」の「四苦」である。
  • 「朝鮮通信史」は室町時代にも来日していた。
  • 中世の人は一日二食。
  • 北条早雲は徒手空拳の素浪人から戦国大名になったのではなく、伊瀬盛時という名の室町幕府に使えるエリート官僚だった。

 

 

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