hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

宮部みゆき『火車』を読む

2020年11月01日 | 読書2

 

宮部みゆき著『火車(かしゃ)』(新潮文庫み22-8、1998年2月1日新潮社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。

 

刑事・本間俊介は、犯人確保時に足を撃たれて休職中、親戚の栗坂和也から婚約者・関根彰子(しょうこ)を探して欲しいと依頼され、探索の3週間が始まる。

和也が彰子にクレジットカードを作るように言ったところ、審査結果は彼女が自己破産経験者だと判明した。翌日彰子は職場も住まいからも失踪した。

本間は彰子の勤め先を訪ねて履歴書の写真から、彰子が品のある美人だと分かった。次に自己破産手続きに関わった弁護士・溝口を訪ね、関根彰子は会社勤めの傍ら水商売していて、八重歯だったと聞き、違和感を覚えた。

本間は和也の婚約者だった「関根彰子」は、本物の関根彰子に成りすました偽者ではないのかと疑いを持ち、徐々に偽物の実像に迫っていく。

冒頭に「火車」の説明がある。「火がもえている車。生前に悪事をした亡者をのせて地獄に運ぶという。ひのくるま。」

 

登場人物

本間俊介:42歳。捜査一課刑事。休職中。息子は(さとる)10歳。妻・千鶴子は3年前に事故死。

井坂恒男:本間家の隣人。妻は久恵。智の面倒をよく見る。

栗坂和也:俊介の親戚。29歳。銀行員。関根彰子の婚約者。

関根彰子(しょうこ):和也の婚約者。失踪中。スナック勤務や自己破産の経験あり。

今井四郎:今井事務機の社長。みっちゃんは事務員。

溝口悟郎:関根彰子の破産手続きをした弁護士。

碇貞夫:俊介の同僚刑事。42歳。

 

作中、「溝口悟郎弁護士」は、都知事候補者の宇都宮健児がモデルで、宮部みゆきが多重債務問題を取材した。溝口のセリフは、取材時の宇都宮健児のもの。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

本間が休職中で警察手帳の提示もできなかなかで、偽彰子の関係者に会って、徐々にそのベールを剥いでいく過程がリアルで面白い。重厚な筆力には感心させられる。

 

多重債務問題が大きく取り上げられた当時が過ぎ去って、犯人が借金の取り立てから逃れるために、本当に無関係な人を殺さねばならなかったのかが、今では納得できかねる。

 

 

宮部みゆき 略歴と既読本リスト

 

 

以下、ネタバレ気味。

関根淑子:彰子の母。宇都宮市在住で、転落死し、事故か事件かが問われる。

本多保:彰子の幼なじみで彼女をしいちゃんと言う。妻は郁美。

北村真知子:本間のリハビリの理学療法士。智は「マチコ先生」と言う。

片瀬秀樹:下着通販会社「ローズライン」の管理課課長補佐。新城喬子と交際していた。

新城喬子:偽の関根彰子。美人。失踪中。父親の借金による取り立て屋に追われる。

倉田康司:喬子の別れた夫。伊勢市の不動産会社社長の息子。

コメント
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