ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

特に、気に入っている香

2012-01-31 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
兄様、まさか、私に剣を…、
松殿「戦以外に道は無し。しかし、鎌倉殿…頼朝の世が泰平に繋がるとは思えん」
義経「アンタたち藤原一門が“臨む”泰平と俺たちが“望む”泰平は、違う」
松殿「義経…そなたの名、どこからの字だ?」
義経「勝手に付けた」
松殿「違うな。源氏八幡太郎義家の字“義”と、その祖である清和源氏経基(つねもと)…そして、奥州平氏初代 藤原清衡の父 経清(つねきよ)の字…奥州に平安浄土をもたらす決意をさせた、あの初代の字を譲られた。その意味が解けぬお前ではなかろう」
義経「…」
松殿「泰平の鍵を持つのは誰か、それが分かっていたから、秀衡は四代目にお前を推挙した。奥州で平家と共に頼朝を打つ決意をした。だが…」
義経「4代目には、泰衡(やすひら・秀衡の次男)がいる」
松殿「泰衡では、まま成らん。よって、内乱(家督相続争い)が起きた」
義経「血を分けた兄弟 従兄弟が争って、何に成る?」義隆を、抱き締めて…「何が残る?」
能子「兄様…」兄の気持ちが痛いほど伝わった。朝廷が仕向けた戦で、従兄弟 義仲や平家の妹である私と戦い、兄 頼朝にまで追われ…これでは、生き場がない。
松殿「孫が残った…義隆。じじに、」面を裏に返して「…注いではくれまいか?」
義隆「じじ…」
松殿「お前の父は、殺された」
義隆「知ってる、聞いた。でも、父上は…」
松殿「じじと母と、共に暮らさぬか?」
義隆「母、上…?」
松殿「仇と暮らす事はない。能子殿も敵の捕虜となり、哀れにも結婚させられ…」
能子「私は兄の敵ではありません。捕虜としてではなく自らの意志で両家婚儀を結びました」
松殿「池田…源氏に寝返ったか。生きるに手段を選ばず…数奇な運命だ」
池田「なッ」腰を浮かせ、殴り掛かる勢いだったから、
能子「池田ッ」を抑え、与一の背後から松殿の前に躍り出た。ワインを持ち「私たちが、その流れ、変えてみせます。どうぞ…」松殿の手の、面の裏にワインを注いだ。
松殿「君のそういう所が“特に”気に入っている」クンと香を確かめた「常盤殿と同じ香…」
能子「うッ」ビクッ、体が唸りを上げ、動けなくなった…「母…上様…?」