ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

輪廻のうねり

2012-01-25 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
人伝に聞いた話だが、咲良の刺青はたちまち広がり、遠方からも男が通うようになった。
胸に刻まれた桜と、咲良の笑みが儚げで、
「待っておくんなまし」
呼び止められた男は、般若の虜になった。
『般若の桜』の異名を取り、二十になった頃には見世で呼んでも拝めぬ『呼出し昼三(ちゅうさん・上級遊女)』となり、数多身請けを断わって遊郭に留まった。
「傷がありんすよ」と、腕に刻まれた文字“芝乃桜”…
生涯で、たった一人の男を愛し続ける誓い、真の愛の刻印を見せ、
「好いた人がおりんす」
男を待ち、年季明け27の咲良は、
きれいになって…あの世で、待ってます
春を待たず、咲良は散った。
そんな桜の伝説が遊女たちに広まり、遊女たちは惚れた男の名を腕に刻み、
「浮気したら、あかんよ」刺青に、真の愛を誓った。

妓楼で御法度の浮気が発覚したら、
「傷、付くわ…」真を灸(やいと)で、醜く消した。
馴染みになった客に、
「また、来てや」す…と小指を差し出し、男のそれと絡めて、
「指きり、やで」小指を賭けた恋をした。破れた男に小指を送りつけ、
「傷がありんす」自らを傷モノにした。それが、遊女を傷付けた、男への代償(つぐない)。
妓楼に脇は無く、男も女も真一本、
好いた男の名を刻み、生涯を誓う。
指を賭けた恋と愛、消えぬ傷となって、あの世まで。
おいらんとこの姉さんは、
花の魁(さきがけ)散り逝くに、
花魁道中、鬼斗花。恋したら仕舞いや、
好いて追われ終われて、狂い咲き、
「待っておくんなまし」
きれいになって…待ってます。
般若に追われた男は、堪んねぇな。