ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

体は楽に、心を蝕む蠱毒薬

2011-10-29 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
一方、弁慶とロク、つまみと酒を運ぶパシリの海尊は、忍者屋敷の最上階 月見櫓(やぐら)に見立てた天守閣で松殿を接待中、ドンチャンドンチャン…それぞれの気忙しい夜が明けて、
チュンチュン、チュンチュン
あぁ…頭がズキッ、痛ぇ。体がズシ…重ッ。まっ…てよ、てるに「イッ!?」目が覚めたら、
匠「賀茂女」が、俺の体にうっぷして寝てる「賀茂女…」を揺すったら、シッ、
池田「今、眠ったところだ」兄貴に咎められた。
匠「と…」いう事は、兄貴も寝ずに「俺…?」ズキッと来て、頬を手で押さえた。殴られた頬より抜歯の痕が痛く「てッ」眠っている間に、何があったのか?「どうしてここに…」
池田「継さんが、お前を負ぶって戻って来た、後から礼を言え」スッと、立ち上がって、
匠「冷さんッ、能子さんは?」
池田「後…」相変わらず、徹夜明けは機嫌悪く「眠…」パタン、部屋を出て行った。
匠「待って、輝にッ!?」呼び止めようとして、賀茂女が、ピクッと動いた。起こしたか?と思ったら「ほ…」眠ってる。そっと布団から出て、代わりに彼女を布団の中に押し込んで、
血色の良い、彼女のぷっくらした頬をツンと押してみた。弾力があって指を押し返してくる。
蠱毒の苦しみから脱け出してくれて…少し開放された気持ちになった。10年前…、
「これ、作って」
母から渡された薬の成分表、タイトルには蠱毒と書いてあった。蠱毒…毒下し、解毒薬かな?
10歳の俺は、それが『コドク』だと読めず、また、人を殺めるものだとは知らなかった。
兄貴の居ない間、こっそりと池田家の冷たい蔵の中に忍び込んで…、すげぇ、宝の山だ。
蔵の中には薬箪笥(くすりだんす)があって、薬草がたくさん保管されていた。珍しい異国の器、道具や機材、計量器…俺にとっては、おもちゃ。それがいっぱい並んでいた。
成分表の文字と文字を照らし合わせ、箪笥をすぅと開けて、保管してある生薬をこっそり頂き、おもちゃで量って調合する。成分表通りに配合すれば、薬なんて簡単だった。小さい俺はその薬がどこの何に利いて、命にどういう影響と体にどんな副作用があって…と、そういう知識がなく、薬って、全て良いモノだと思っていた。だから、母のために良いモノを作ったと信じて疑わなかった。何より、母は薬を作ると褒めてくれた。
「匠は…本当に器用ね。それに、優しい子だわ」
ねぇ、母さん、この薬…何?
「体を、楽にする薬よ」
楽?そう言う母に疑問を持った。だが、ブルル…首を振って、母さんが、そんな事しないよ。