ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

俺の、手の届かぬ花

2011-10-05 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
どうしたら、あんなに強くなれるんだ?
身なりが良くても、身のこなしがこれじゃ、カッコ悪…。
彼女の前でカッコ良く、強くありたいと剣術の稽古に打ち込んだ。
彼女が舞を始めたから、俺も始めた。一緒に舞う事になって、少し近づけた…と、
能子「池田さんって、お上手ね」にこりと笑顔が、さらりと言葉と黒髪が遠のいた。
もう少し、低い所に咲く花なら…と舞台に咲く遠くの高嶺を見ていた。
もっと、彼女に応えられる男になりたいと勉強もした。
能子「ねぇ、池田さん。これ、何ていうお花?」
堅香子(かたかご)…かたくりの花です。ご存じないですか?ほら、
『もののふの やそをとめらが 汲みまがふ 寺井の上の かたかごの花』(万葉集 大伴家持)
手に取った、かたかごの花。それはまるで、遠い都の乙女たちのよう…、
能子「もののふ?」
武士、男の手にあってこそ花は美しさを増す。その花に手を伸ばし、もう少しで俺の手に…、
資盛「おい、輝(てる)。美(よしみ)を俺の側室に入れるぞ」
はぁ?
資盛「子が、」
出来ちゃった?順番逆でしょ。
資盛「固い事言うなって」ポンッと、肩を叩いて、
ふぅ…これだ。身分ある我が主君は、いとも容易く俺の姉をものにする…。
資盛「そういや、アイツも結婚決まったってな」顎で、舞台の彼女を指して、
え?
資盛「能子だよ。花山院家の兼雅様って言えば…、」
ガターンッ、扇を落とした。
「十も上だってな。大丈夫か?…アイツ、」
手が、カタカタ…痙攣している。
花山院…、
タンッ、扇を仕舞って、
池田「隠れん坊か?君、確か…」義経さんの養子で「義隆…くん?」
義隆「うん。匠兄ちゃんの兄ちゃん…」ひょこっと舞台脇から顔を出し「池田さんも、能子ねぇちゃん、好きなんだね」