ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

仁愛

2011-10-24 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
能舞台中央で胡坐を掻いて、妹の模造刀をチンと鞘に収めた。護身用にもならない、
義経「ダミー(偽)置いて、本モン持って行きやがって。あのバカ…」能子が、与一の短剣を引ったくり、兼雅とかいう許婚んとこに行った。何仕出かすつもりか…大よそ検討が付いた。
早まるなよ、ギュッと目を瞑って、ゆっくり目を開け「…どうした、眠れないのか?」
義隆「俺も、ねぇちゃん、待つ」
義経「いつ帰ってくるか…」帰って来ないかもしれないし「分かんねぇぞ」と言ったら、
クルッと背を向け、ダッシュして忍者屋敷に戻って行った。なんだ?アイツ…と、思ったら、
タタタ…ッ、戻って来た。忍者屋敷内徒競走があったら、TOPだな。
手に古紙と木炭(昔の鉛筆)を持って、俺の隣にペタンと座って「なんだ?お絵描きでもするのか?」何か書き始めようとしたから「ちょっと、貸せ」ぴり…と紙一枚を破いて、
手が汚れないように木炭に紙切れを巻いてやった。ほら、と木炭を返したら、漢字を書き始めた。その文字…「誰に、教わった?」
義隆「池田さん」掌に書いてくれた文字を、紙に書いた「ひと…」“仁”って。
義経「池田が?」
義隆「うん」でも、もう一つの…「アイ…って、どう書くの?」俺に木炭を突き付けた。
義経「まだ、早い」5歳に覚えさせる漢字じゃない、だが、
義隆「ふんッ」さらに、木炭を突き付け「書いてッ」
こういう所が、どっかの俺の妻らに似て強情だ。木炭を引ったくって書いてやった。
義経「心を中に、受けると書いて、愛。この二文字で、仁 愛(ジン アイ)だ」
義隆「読み方、変わる」
義経「そうだ。愛(アイ)は、めぐみ、とも読む」木炭を返して、
義隆「めぐみ…って?」書き始めた文字は、まだ漢字の組み立てが出来ないのか、整わず…、
義経「恵みとは…望み、希望だ」義隆の手を握ってやり、大きく分かりやすく一緒に書いた。
「人が二人心受け愛と成す。人に優しく、望みを与え、情けをかける(慈しむ)」
義隆「なさけ…」不思議そうな顔をして、パッパッと、ふりかけを「かける?」マネをした。
義経「ご飯にかけるものじゃない。それぞれの人にかけてやるもので、他人を思えって事だ」
義隆「たにん…ねぇちゃん、たにん?」
義経「身内だな。つまり、人の生まれや、昔ってのがある。それを考えてやれって…」
義隆「ねぇちゃん、泣いてた」
義経「…そうだな」