ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

不揃いの仁愛

2011-10-27 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
義隆「俺…なら、夢を聞くッ」
義経「夢…?」なら、早く醒めたい…「分かった。明日、その夢を聞く。それでいいだろ」
妹の夢…?聞いた事ないな。
義隆「うん」絶対だからね、と俺を一睨みして、再び、漢字の勉強を始めた。
同じ文字ばかりを練習しているから、義経「名前も、書けるようにしろ」と言ったら、
義隆「…う…ん」返事が遅い、という事は、
義経「画数が多いからな」苦手なのかと思って、義隆から木炭を取り上げ、
義隆(よしたか)…従兄弟の子 義高の呼び名を受け継ぎ、意味は、
「我 美しく、高らかに舞う龍の如し」これが、葵が付けた『義隆』の名の由来だった。
義隆「りゅう…」
義経「義隆の“たか”は“りゅう”とも読む。美しい龍のようになれって事だ」
義隆「龍…って」
義経「見たこと無いから、分かんないよな」空想上の生き物に苦笑したら、
義隆「うう…ん」首を横に振って「ねぇちゃんが…見せてくれた。俺の…銀の龍…なっ…た、」
義経「そっか」もう寝る時間が過ぎてる。昨夜も巴御前に義仲の話を聞いて、遅かったし。
仁愛の文字の上に木炭を置いて、落ちそうな頭を膝に乗せて寝かせてやった。
古紙いっぱいに敷き詰められた、不揃いの仁愛に「ガキのくせに…」いや、子供だからか、
大人の、そういう世界と現実を壊そうとする。
“同じだよッ”
そうだな、夢って、皆が見るもので、それぞれが掴むものだな。ただ、夢には悪夢もある。
妹の、それを作ったのは、この俺だ。敵方の妹をどうしてやる事も出来ず、結局、救えなかった。負ぶった小さい妹の、平家の日輪は俺から…離れた。
“お前なら、どうする?”
すまない…。妹を苦しめるだけで、何も出来なかった。平家の、アイツの夢って何だ?
義隆「母…上…」の夢を見ているのか?
まだ、母を恋しく思う年頃で顔を覗き込むと、まだまだ、あどけない。その顔は俺の妻らに似て、起きてりゃ生意気盛りの…アイツに似て、
“何とかしてよッ!”
くそッ、いつも誰かが脳に投げ付けるこの問いが、耳に付いて…、コツンッ
「いいか?」と顔を出した、義経「富樫…」