ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

身分違いの過ち

2011-10-21 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
「ねぇ、母上様。私の父上様って、どこにおられるの?」
遠くよ。
「遠くって、どのくらい遠く?」
…遥か遠くよ。
「遥かって、どのくらい遠く?」
夢の向こうより、遠いの。
「夢…?じゃ、いつ、私の手を握ってくださるの?」
代わりに、手を握ってくださる方が、きっと、現われるわ。
「きっと?」
きっと…って、そんな夢のような未来と、希望は無かった。
母は未婚。父の顔は知らない、私は不義の子。男女の、たった一回の過ちで私は生まれ、
私という事実は隠された。身分違いの男女の恋で、あぁ…間違って生まれちゃったわね、
私って、いるの…?
私のこの手を必要として、握り返す人がいるの?そう思っていた。そんな時、
瑠璃姫「私の従兄弟に会ってみない?」長身で品のあるお顔立ちは、姿形から身分の高さが感じるようなステキな方で付き合うようになった。私の手を包むように大きく握り返して…
「別れよう」
え?どうして…も、なぜ…も、何も…無い。
「婚姻が決まった」パッと、
身分ある方の、その繋いだ手を振り解き…そっか。精一杯の笑顔を取り繕って、おめでとっ。
じゃぁねッ、大きく手を振って、楽しかった思い出も一緒に、往復ビンタで吹き飛ばした。
ただ、消えて無くなれば良いものを脳に刻まれた記憶は深く、心に留まった。
こんな時、疎ましい…自分の記憶力。忘却する事が出来れば楽なのに…。
忘れられない思い出から出ようと宮中を出た。私を止める人も、探す人も、いなかった。
「イッ」匠君が、大きく声を上げて、冷泉院「はっ」と、現実に引き戻された。
しっかりしなくちゃ…。ここに生身の人間がいて、彼は怪我をしてる。私は女医よ。今、彼の体を介抱しているの。現実を見なさい、と自分を叱咤した。
体の傷に軟膏を塗って「ひどいわね」どうしてここまで?チラッと斎藤を見たら「ッ!?」私の視界に入って来たのは、腕組みしてこちらを見ている、
兼雅「よう、名医」