ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

…今まで、ありがと

2011-10-10 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
繭子さんとの婚姻を受けた。その直後、京を追放され、
「ハメられたな」
彼女を、能子さんをどうされるんです?
「それより、お前…俺の下に就いて、那須一門はどうなる?」と言われ、
俺なら大丈夫です。彼女を連れて那須に行きます。(那須には離宮があり、現在の那須御用邸)
「…なら、俺の馬を使え。女の足じゃ那須まで持たない。それと…妻の、」
え…調査?
「頼んだぞ」
能子さんと京を離れ、二年半が過ぎた。その間、夜はもぬけの殻。
たまに、昼間眠り込んで、悪い夢でも見てしまったのか、ガバッと起き上がり、
能子「あ…ごめんなさい」ガタガタ、震えて「…大丈夫なの」
与一「何がです?」厳しく問い詰めた。大丈夫って何が?形だけの結婚じゃないんですよ。
少しは…、彼女の頭をこちらに寄せて「一人で抱え込まないで下さい」強く肩を抱いたら…、
チリンッ、彼女の鈴が鳴って、
能子「あ…」小さく声を上がった。ダラ…と肩の力が抜けて、顎が少し上がった。
与一「能子さん…?」俺を、見ている?
能子「…」息を潜め、与一の腕をすり抜けた。彼の頭の後ろに右手を伸ばして、
与一「ッ!?」
能子「少しの間、眠ってて」左手に持った巾着で、彼の口と鼻を押さえた。
この中の誘眠剤が…利かない。薬の効果が薄れている。
グ…イッ、与一が私の手を掴んで、引き剥がそうとした。だから「ごめんッ」
ドコッ☆…膝で一発、
与一「が゛ッ」
チ…リ、ンと巾着と、カランッと櫛が落ちた。
能子「これ…」与一の左の脇にいつも忍ばせている懐剣を懐から抜いて「借りるわね」
倒れ込む彼を見た。すると、キラッと光る櫛が目に映った。まるで、漆の艶と銀の輝きが涙のように見えた「…今まで、ありがと」
暗い部屋を出た。確か、継さんここに抜け道を作っていた。そこを通れば…、
「失礼仕ります」掛け軸を横にズラして、松月花、松殿の間、
松殿「今度は、本物か」着いた。