『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  750

2016-04-01 09:04:18 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らは、キドニアの船だまりを後にした。午後遅くの海上を渡ってくる西風はきつい、向かい風に抗って浜に帰ってきた。
 パリヌルスは、浜に立っているイリオネスに木札搬入行の完了と無事の帰着を報告する。報告を受けたイリオネスは、一行の労を言葉短くねぎらった。
 『おう、パリヌルス、ご苦労であった。俺は宿舎に帰る。浜のあとをよろしく頼む』
 『解りました』
 彼は、宿舎に歩を運ぶイリオネスを見送った。
 
 今日の集散所においての新艇の価格決めの話し合いが午後に行われた。出席者は五名、話し合いの場の空気が固く、そして、重く感じられる。
 オキテスの目つきが厳しい、オロンテスは、目を半眼に閉じて座している。ハニタスとトミタスとは協力的な姿勢でありながら、新艇の販売に関してクレタの情勢事情を分析思考して話し合いに臨席している。スダヌスはというとアヱネアスらと集散所、両者が協力関係を親密良好にして、この事業の推進が図られるよう望んで座している。コーデネート役を果たそうとしていることがうかがわれた。
 話し合いの場は、これまでにない異様な雰囲気を漂わせて催行された。
 ハニタスが口を開く、話し合いの始まりである。長口舌で話し合いの口火を切った。
 『御一同、多忙中、時間を割いての出席ありがとうございます。今日現在のクレタの諸情勢は楽観は許されません。そのような今、前代未聞の建造体制で建造される新艇5艇の販売価格決定の話し合いを行います。建造者、販売取扱をする集散所が合議を行い販売価格を設定する。それはクレタの諸情勢下にあって、できるだけ早期に5艇全艇を販売完了したい意向があります。その意味においては、破格的な価格であることが望まれるからである。それであって望む利益の確保も図りたい、それもあります』
 ハニタスは、ここまで述べて一同と目を合わせた。一拍の間を取り話をつづけた。
 『集散所としては、原価に関する分析を行い価格設定の上限価格を決め、これを提示します。そして、集散所として特例の販売手数料をいただくというように決めました。何卒これを承認いただきたいと考えています。三日後に、この件の打ち合わせ会議をもって決定する次第です。よろしくお願いいたします。設定上限価格、特例販売取扱手数料等について、トミタスに説明させます。よろしく願います』
 ハニタスは長い口上を述べ終えた。一同は理解した。
 トミタスは、ハニタスの口上にある販売上限価格、特例販売取扱手数料等を書き記した木板をオキテスとスダヌスに手渡した。
 真剣な目つきで、それに見いるオキテスとオロンテス、そして、スダヌス、三人は、ハニタスと目を合わせた。


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