『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  814

2016-06-30 04:48:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ドックスは、パリヌルスらの心づかいを身に感じた。
 パリヌルスがオキテスに声をかける。
 『ところでオキテス、ドックスに話してくれたか?全艇チエックの件のこと』
 『おう、話してある。俺も少しばかり気になってな、昼めしの間に全艇を見て廻った。試乗を終えたらドックスを連れて三人で見て廻ろう』
 『おう、そうしよう』
 『パリヌルス、行こう』
 『ドックス、行くぞ』
 彼らは連れ立ってヘルメスの浜へと足を運んでいく。
 統領も軍団長も、すでに波打ち際に立ってヘルメスを眺めている。
 ギアスとパリヌルスが小島巡りのコースどりについて打ち合わせた。
 『どのようなコースどりにしましょうか?』
 『小島の北に吹いている風は?』
 『浜でこの状態ですから、強めの西風が吹いていると考えられます』
 『よし!小島の西を北上し、方向転換地点は、小島の北岸から5スタジオンくらい沖で東へ向かう。帰路についての判断は状況次第といこう。以上だ』
 『判りました』
 パリヌルスは、統領のところへ歩み寄る。
 『統領、ヘルメスの方へ、軍団長もどうぞ』
 準備しておいたハシケでヘルメスへと向かう。
 『おう、パリッ!ご苦労ヘルメスに乗るのは久しぶりだ』
 オキテスとドックスの姿は、もうすでに艇上にある。二人はギアスとともに統領と軍団長を艇上に迎えた。
 『統領、軍団長。ようこそヘルメスに』
 『おう、オキテスにドックスにギアス。元気なお前らに会うのがうれしい』
 ギアスが操舵の座に就く、パリヌルスが合図を送る、ヘルメスが静かに動き出した。ヘルメスは小島の南端を廻り、北へと進路をとり、西岸に沿って北上した。
 西風が強い、櫂操作で飛沫が飛ぶ、飛ぶしぶきが艇上にいる者たちのほほを打つ、ぬぐうしぐさ、微笑みを交わす、乗り心地の変わったヘルメスの走行感を五体に感じていた。
 あっという間に西岸を過ぎる、強さを増した風がヘルメスを東へと押す、抗う艇体、ヘルメスは北上を続けた。ギアスもパリヌルスも小島の北岸を見つめている。パリヌルスがギアスにサインを送る。
 方向転換の合図だ。ギアスが櫂舵を操作する、ヘルメスは東へと波を割り始める、間髪を入れず、ギアスの指示が飛んだ。


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