『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  77

2019-07-30 07:53:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスが一同を前にして、おもむろに口を開く、話し始める。
 『諸君!日々、大変にご苦労である』
 一同を見廻す、目が合う、うなずき合う。
 『日々において、我らが食す糧を送り届けてくれて、ありがとう!この場において、君らに心から感謝の意を伝える』
 アエネアスは、感謝の意を目線に込めて場を見まわす。
 『ありがとう!ありがとう!』と連呼する。
 アエネアスのメッセージは、彼らに伝える感謝から始まる、暦の改まりを伝える、各員が一層の奮励に努め、民族の未来の構築についての意を伝える、メッセージの伝達を終える。
 場から拍手が沸き起こる、アエネアスが手を高くさしあげ拍手にこたえる。
 メッセージをもって伝える民族を統べている者の心、それを受ける場に会している者ら、アエネアスが話し終える、双方の心が一つにまとまって場が沸く、拍手が湧きあがる、興奮のるつぼと化す。
 アエネアスとイリオネスは、パン工房の彼らとの交歓をかみしめる。彼ら一同が場を解く。
 セレストスが新暦の始まりに際して、試作した新しいスペッシャルパンをアエネアスとイリオネスに供して、しばし歓談の時を過ごす。
 『おう、この味、この香りなかなかだ』
 アエネアスの言葉にイリオネスがうなずく。
 『統領、これはいいですね。セレストス、これは多くの人にうける!間違いない』と賛辞を贈る。
 二人は、新しいスペッシャルパンの誕生をほめる。
 イリオネスが太陽を見あげる、頃合いを計る。
 『ではな、セレストス、オロンテス隊長によろしく伝えてくれ』
 二人は次の場、武闘訓練場へ歩を向ける。
 今、二人の間には語る事柄がない、二人は何事も語らずに歩を進めて行く。
 前方に武闘訓練場が見えてくる。
 何となく身構えるアエネアス、イリオネスも心なしに緊張する、それなのに歩調に変わりがない。
 武闘訓練場が指呼の距離に近づく訓練場に集まっている者らから拍手が沸いている。
 パリヌルスとリナウスが並んで立っている、二人も手をたたいている。
 彼らとの距離が接近する、パリヌルスとリナウスの二人の拍手が力強くたたかれる。
 双方が対面する、手がさしのばされる、アエネアスがパリヌルスの手を、イリオネスがリナウスの手を握る、次いで、アエネアスがリナウスの手を、イリオネスがパリヌルスの手を握る。
 アエネアスら二人を迎える者らのうつ拍手が最高潮となる、彼らは二人を迎える気持ちを拍手に込めて手を打っている。
 アエネアスとイリオネスの感情がここに極まった。