『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  74

2019-07-25 13:15:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 三枚目の木板に見入るドックの姿を目にとめる。
 『ドックス、三枚目はだな。走行安定性と船の補強の設計だ。造作工作がかなうかな?軍船はでかいゆえの心配事だ』
 『そうですな、造作工作に使う金具類のあるなしが造作に関係しますな。用材の手配を終えたら、即刻、キドニアの集散所に金具類の調達に向かわねばなりません。この走行の安定と補強の造作工作は、図面と首っ引きで研究します。この図面一式をあずからして下さい』
 『解った。その三枚をお前に預ける、検討よろしく頼む。この造作工作は、船に乗っている者らの命の安全に関わるだけに何としてもやることを考えてくれ。また、手順段取りでは、一番目に手掛けてもらいたい造作工作でもある』
 『解りました。私自身、今日一日、このことの研究に時間を費やして行います』
 『おう、よろしく頼む!太さ、長さ、それによる造作工作方法も研究してほしい。明日のガリダ方との交渉に関係するからな』
 『はい、承知しました』
 パリヌルスとドックス、二人の話し合いが終わる。
 話し合いを終えたドックスは、船台の場へと急ぐ、5台の船台が完成を4日後に控えた船5隻の最終作業に多忙を極めている。
 ドックスが見て廻る、出来あがり具合を丁寧に点検する、満足といえる状態を確認する。
 彼は安堵する、心が落ち着く、船台の場の自席に身体を落ち着ける、パリヌルスから預かった図面を見つめる。

 この時代の木造船には、まだ、キール構造が採用されていない。船底は平底形態である。軍船は交易船に比して船体が細く長い構造である。
 航海途上における、海の波に対する抵抗力が強いとは言い難い構造である。沿岸に沿っての航法で航海する。常に海の波の状態に気を配って航走していたのである。
 パリヌルスの軍船改造もこれに準拠して改造を構想していたのである。パリヌルスが改造に手を尽くすのもこの時代の船の船体の弱点を考慮して、どのように対応するかに脳漿をしぼっていたのである。
 彼が改造をもくろんでいる軍船の大きさは、(サイズ単位はメートルで表示)船体の長さが約30メートル、船幅が約4メートルである。帆柱は、1本帆柱で1枚帆のロングシップである。
 構造はこの時代の人智の及ぶ限りにおいて、対諸抵抗を考えて造られてはいるが満足できる、安心できる航海が続けられるとは言えない。
 改造を目指す軍船は、この時代の交易船とは違い、船速の出やすいロングシップ構造である。
 なお、この時代の洋上における軍船同士の洋上戦闘における衝突衝撃戦法の効果性についてもこれでいいのかと検討する。
 航走する、荒れる海の波に翻弄される、船を押す風力に順応する、船体が横に滑りやすい、直進性も気にかかる、ありとあらゆる状態に対応して、安心航海、安定航走の出来る船体構造の軍船に改造することを目指して思考に集中する。
 ドックスとの話し合いを終えても彼は思考を続けた。