『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  637

2015-10-20 05:58:57 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 テカリオンは、丁重に礼を述べた。
 『軍団長、ありがとうございます。では、ヒルイチにお伺いします。荷卸しの手配もあります。私はこれにて失礼いたします。オロンテス殿ありがとうございました。荷卸しの件ヒルイチから取りかかります。少々手をお借りしたいのですがよろしくお願いします。それから新商品の件よろしくお願いします』
 『判りました。しっかとお受けします』
 テカリオンはイリオネスの宿舎をあとにして、浜に向かった。イリオネスとオロンテスはパン事業の事について話し合った。
 『-----。オロンテス、お前の努力でパン事業の方が順調である。お前には、統領ともども感謝している。何かあったら言ってくれ、力添えは惜しまん。新商品の件、どのように考えているか、俺は知る由もないが、出来あがったら事後報告でいいからしてくれ。おまえには感謝している、ありがとう』
 ありがとうの一言で人を動かす、イリオネスは人使いの要領を心得ていた。それでいて財務についても明るかった。彼は小麦の決済に関して思考を巡らせた。パン事業も順調であり、漁業の方も春からの水揚げがよく、また、魚の加工品の売り上げも順調と言えた。
 そのような次第で財政状況は潤沢と言えた。それでいて、ガリダ方より受け入れた新艇建造用材の決済の事に思いをはせた。用材の決済額については今のところ不明である。少々の不安も感じる。
 彼はオロンテスが去ったあと、アヱネアスの宿舎に出向いた。
 アヱネアスは、ユールス、父のアンキセス、そして、アカテスで昼食の場を宿舎の前の草地で囲んでいた。
 アヱネアスから声がかかった。
 『おう、イリオネス、何か俺に用か?急ぎか』
 『用件はありますが、急ぎではありません』
 『そういうことなら、まあ~、お前もそこに座れ!昼めしを一緒にしよう』
 アンキセスも声をかけてくる。
 『イリオネス、お前も休む暇もなく忙中を過ごしている。耳にしているところでは、でっかい仕事を抱えているようだな、ご苦労。俺なりにそれとなく気に掛けている。お前がアヱネアスについていてくれて、俺は安堵している。何かと宜しく頼む。先ずは、一口飲め!アカテス、彼に酒を注いでくれ』
 『あ~、いただきます。統領、そして、アンキセス殿と食事を共にするのは久しぶりです。馳走になります』と言って酒杯の持つ手を差し出した。