『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  636

2015-10-19 06:21:32 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おおっ!これは何だ?!』
 『本当は、もっと早く事情説明しておくべきでしたが、品物に自信が持てなくて報告が遅れました。羊乳蜂蜜パンを焼いていて焼き加減を失敗して、ひと工夫の上、オリーブ油を加えてパン生地を練り上げ焼いたパンです。口にしてみてください。今、テカリオンどのと食べてみて、声がかかったのです。『おい、これはいけるぞ。保存食に向いている。酒のつまみにもいい』と言われて、テカリオンどのから、キドニアにいる間に焼いてくれと注文を受けた次第です』
 イリオネスは、口に運んで噛み砕いた。
 『おっ!これはうまいっ!オロンテスいける!商品としていけるな。ゴーだ。やれ!OKだ』
 『判りました。早速、商品として出せるように計らいます。テカリオンどの、とりあえず、5日後に納品の段取りします。キドニアで渡します。商品の包装等は私に任せておいてください』
 『いいでしょう。オロンテス殿、よろしくお願いいたします。価格については、その時に話し合いましょう』
 『いいでしょう』
 新商品の件については、その場で話がまとまった。
 イリオネスは、その状況を見ながら、聞きながら、小麦の決済について考えていた。イリオネスが口を開く。
 『おう、テカリオン。決済について話し合おうか』
 この言葉を耳にしたテカリオンは、イリオネスに気づかれないように身構え答えた。
 『はい、軍団長、このようになっています』
 テカリオンは、同行させて来た者から、詳細を書きつけた木板を受け取りイリオネスに手渡した。
 『このようになっているのか、今度納品するために積んできた小麦の量は、前回より少し多いのか?』
 『はい、このように言っては何ですが、少しではありません。かなり多くなっています。私の想いでは決して、あなた様方には、損をかけないように心配りをしています』
 『そうか、解った。いいだろう。オロンテス、このようだが、どうだ、お前の意向は?前回分の決済額については了解した。今回の受け取り分についてだ。よく見るのだ』
 イリオネスは、オロンテスに木板を見せた。
 オロンテスは、小声でイリオネスにささやいた。
 『そうか』と言ってイリオネスはうなずく。
 『おう、テカリオン、小麦の件承諾する。荷卸しは、オロンテスの指示を受けてやってくれ。もうじき昼だ、決済は昼を済ませたらここでする。出向いてくれ』
 イリオネスは、テカリオンに申し渡した決断の言葉であった。