『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  530

2015-05-22 08:46:54 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『まさかであったですな。頭、私らも全く気が付きませんでした。三本マストの船とはーーー』
 『中央の帆柱があれだけ高いと走行安定がむつかしいのではーーー』
 彼らの会話である。彼らの頭の中には、従来の横四角形の帆形しかなかったのである。浜頭はスダヌスに声をかけた。
 『おう、スダヌス、なかなかの船ではないか。三本帆柱、カッコのイイ船ではないか。中央の帆柱があれだけ高くても大丈夫か、船の長さに比べて中央の帆柱が高い、風ハラミ走行の安定性が気になるところだが』
 『そうか、その様に見えるか、帆張り、風ハラミにひと工夫されている船なのだ。その姿カタチを出航の折には見せられないかもしれないが、この俺には説明が出来ない。まだ、テスト走行といったところなのだ』
 『これを知っていれば、ギアスに説明させたものをーーー』
 浜頭は唇を噛んだ。
 艇上に声が飛んだ。艇尾の操舵を担当しているカジテスからだ。
 『キャプテンギアス!東から微風が来ています。少し南寄りです。海上のもやを払っています』
 『何!そうか、よしっ!いいぞ』
 ギアスは緊張した。
 渚にいる者たちが話し合っている。
 『おう、スダヌス、お前ら運が強いな、感心感心といったところだな。出航の時が来る、風が吹く、もやが吹き払われる、それも追い風だ。もう乗船の時だろう、行け!』
 『浜頭、ありがとう。見送りに足を運んでくれるとは。ヒマをつくってスオダに来てくれ。ここでは話すことのできない話もある、俺は待っている』
 『判った。何とかしてお前のところへ行く』
 アヱネアスもイリオネスも浜頭に別れを告げた。
 『イリオネス、乗船だ。空模様、風具合がいい具合になりつつある。アヱネアス殿をお連れしてくれ』
 二人は海に身を浸して、ヘルメスに向かう。これを見送るスダヌスと浜頭。
 親交のある二人は互いの肩に手をかけた。
 『スダヌス、元気でいてくれ。必ず、行くからな』
 『おう、待っている!必ず、来いよ』
 二人はじい~と見つめ合う、肩を抱く、手を握り合う。互いに相手の髪の毛を引き合う感覚を覚えた。スダヌスは、海に足を突っ込む、歩を進める、ヘルメスの船べりに手をかける、肩まで沈めて海底をける、ヘルメスに乗った。
 ギアスの指示が飛んだ。
 『中央帆柱、帆を上げっ!舳先き、艇尾帆柱、帆を上げっ!漕ぎかた準備!いいな!』