彼は言葉を失っていた。胸に突き上げてくる万感が言葉を失わせていた。さまざまな思いが通り過ぎていく、平静さを取り戻して、イリオネスに声をかけた。
『おう、イリオネス』一拍をおく、
『あそこに目にするのは、ギリシアではないのか?』
『はあ~っ?!』
と答えて、イリオネスは、スダヌスに確かめた。
『そうだ、イリオネス。遠くにかすんで見える。あれがギリシアだ』
アヱネアスとイリオネスは、顔を見合わせた。初めて、己らが生きている世界を目にした。驚きであった。
『あれが、あれがか!』
アヱネアスは絶句した。
現代を生きている人が見ると、それは一風景に過ぎない情景である。この時代の者たちが頭中に格納していた世界観は一枚の盆の上に展開している。その世界の成り立ちを目にして理解した。
アヱネアスが口を開いた。
『この山のてっぺんは、凄い!世界を見渡すことができる山だ』と言いながら目を移していった。
半島岬から西方向への海岸線を目線が辿っていく。クレタ島の西端を過ぎる、その先には何もない、海のかなたに水平線を見た。目線を南方向へと移していく。クレタ島の海岸線に目線を戻した。海が極めて近い、足下に見えた。
集落の街区が見える。スダヌスを手で招いて尋ねた。
『スダヌス、あれは何だ?』と指さした。
『アレですか。統領、あれは、宮殿、集散所のあるフエストスの集落です』
『ほう、そうか』
アヱネアスは、口を閉じて、海岸線の向こうに拡がる海に目を移した。その海も眺める彼方の果てには水平線を目にした。
目を東南方向に、そして、東方向に移していく、果てしなく海原が広がっている。目をクレタ島内陸部へと戻した。
クレタ島三峰の一つ、デクテイ山(2148m)を目にした。
アヱネアスもイリオネスも驚きをかくすことができなかった。この高い山の驚異を目のあたりにしていた。
二人は、山頂に立って目にする眺望を確かめた。
彼らは、彼らが抱いている世界観を確かめた。描いていた世界観、いま目にしている世界、二人は、大いなる不思議を感じていた。
アヱネアスは、南方向に展がる大海原を眺めた。
『おう、イリオネス』一拍をおく、
『あそこに目にするのは、ギリシアではないのか?』
『はあ~っ?!』
と答えて、イリオネスは、スダヌスに確かめた。
『そうだ、イリオネス。遠くにかすんで見える。あれがギリシアだ』
アヱネアスとイリオネスは、顔を見合わせた。初めて、己らが生きている世界を目にした。驚きであった。
『あれが、あれがか!』
アヱネアスは絶句した。
現代を生きている人が見ると、それは一風景に過ぎない情景である。この時代の者たちが頭中に格納していた世界観は一枚の盆の上に展開している。その世界の成り立ちを目にして理解した。
アヱネアスが口を開いた。
『この山のてっぺんは、凄い!世界を見渡すことができる山だ』と言いながら目を移していった。
半島岬から西方向への海岸線を目線が辿っていく。クレタ島の西端を過ぎる、その先には何もない、海のかなたに水平線を見た。目線を南方向へと移していく。クレタ島の海岸線に目線を戻した。海が極めて近い、足下に見えた。
集落の街区が見える。スダヌスを手で招いて尋ねた。
『スダヌス、あれは何だ?』と指さした。
『アレですか。統領、あれは、宮殿、集散所のあるフエストスの集落です』
『ほう、そうか』
アヱネアスは、口を閉じて、海岸線の向こうに拡がる海に目を移した。その海も眺める彼方の果てには水平線を目にした。
目を東南方向に、そして、東方向に移していく、果てしなく海原が広がっている。目をクレタ島内陸部へと戻した。
クレタ島三峰の一つ、デクテイ山(2148m)を目にした。
アヱネアスもイリオネスも驚きをかくすことができなかった。この高い山の驚異を目のあたりにしていた。
二人は、山頂に立って目にする眺望を確かめた。
彼らは、彼らが抱いている世界観を確かめた。描いていた世界観、いま目にしている世界、二人は、大いなる不思議を感じていた。
アヱネアスは、南方向に展がる大海原を眺めた。