『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  528

2015-05-20 08:28:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『イリオネス、何を言いたい?』
 『俺の言いたいことか、浜頭に出航の挨拶をしようと思ってな』
 『そうか、思うところは一緒か。ギアスがめしの場にいない』
 話し合っているところにギアスが姿を見せた。
 『おう、ギアス、どうした?』
 『はい、今日の空模様、風の具合の観察です。今、海上は濃いもやがかかっています。風は凪ぎ状態、見通しが悪い。出航のタイミングの思案です』
 それを聞いたスダヌスが答える。
 『そうか、そんな状態か。急ぐことはないのだ、ギアス。朝めしを済ませろ!それから、一緒に渚に行く。いいな』
 『判りました』
 ギアスは急いで朝めしを済ませた。
 『ギアス、もういいか、行くぞ!イリオネス、お前も一緒に来い』
 『おう!』
 三人は腰を上げた。渚に立つ、海を眺める、空を仰ぎ見る、東に目を向ける。昇り始めて間もない太陽をもやを通して見た。
 『ギアス、もやが濃いのう』
 『そうです』
 『今日は追い風が期待できるか、否かだ。この季節、東風は気まぐれだ。半島岬の西ではほとんど期待はできないが、岬の東では期待できることもある。どっちにしても漕いで出航だな。覚悟せい!イリオネスにギアス、そういうことだ。いいな』
 『判りました』
 ギアスは覚悟を決めて応えた。イリオネスがギアスに指示をした。
 『ヘルメスを海へだ。いいな』
 『判りました』
 スダヌスが声をかける。
 『イリオネス、行こう。出航のあいさつに行こう。統領も一緒がいい』
 『判った』
 アヱネアスに声をかけて三人が浜頭の屋敷に歩を運んだ。
 浜頭は庭に立って乳白のもやを見ていた。
 『おはようございます』
 『おう、皆さん、おはよう』
 『浜頭、昨夕はたいへん馳走になりました。ごちそうさまでした。私ども帰ります。いろいろたいへん世話になりました。ありがとうございました。浜頭も是非、西の方へ出かけてください。待っております』
 『そうか、帰るのか。スダヌス、また、ゆっくり出かけて来い。話も積もる。そういうもんだろう』
 二人は言葉を交わして手を握った。
 『お二人ともお別れですな。このたびの事忘れはしません。また、おいで下さい』
 挨拶が終わった。三人は浜頭のもとを辞した。