『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  507

2015-04-14 07:49:20 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アヱネアス一行はなかなかの健脚である。疲れを見せることなく、ソニアナの集落の広場に立った。
 『おう、着いたか。重畳!一同、ご苦労!』
 アヱネアスが一同に声をかけた。スダヌスが言葉を返してくる。
 『ややっ!統領もなかなかの健脚ですな。道中で「参った」と言われるかと、ひやひやでした』
 『スダヌス、それは少々言いすぎだよ』とイリオネス。
 『いやいや、それは素直な言い草だよ。それくらいに思われても仕方がない。俺の日常がそのように見えるのかな。よし、山行から帰ったら、日々、鍛練をする!そして、ネクストに備える。ハッハッハ!』
 一同が疲労なしの風情で、午前の行程を終えたことを歓び合った。
 『ちょっと山の空気を吸って、昼めしといこう』
 『親父、俺、ちょっと、行ってくる』
 『お前、この場でおれを呼ぶのに親父はないだろう。何とか呼びかたを変えろ!そうか、判った』
 クリテスがイリオネスにことわりを入れた。
 『おい!クリテス、俺が一緒に行く』
 二人は、広場を横切って一軒の宿坊と思われる建物に歩を向けた。二人が宿坊の戸口に立つ、中から主人と思われる男が出てくる、男が足を止める、戸口に立っているクリテスに目をとめた。
 その者が口を開く。
 『あ~、クリテス殿では、、、』
 『ご主人、お元気でしたか?』
 『おう、この通り、達者達者で暮らしています。クリテス殿の姿、容姿が変わられたのでは、、、』
 『戸惑いはそれか。そうか、変わったといえば変わった』
 クリテスは、宿坊の主人をイリオネスに紹介して用件を伝えた。
 『クリテス、詳しいことは俺が説明しよう』
 『判りました』
 用件を聞き終えた主人は、うなずきながら答えた。
 『判りました。手前ども、喜んでお引き受けいたします。当方をご利用いただき、まっことありがとうございます。直ぐおいでになりますか?』
 『おう、そうする。クリテス、三人を頼む』
 『判りました』
 クリテスが三人を案内して、一行は宿坊に落ち着いた。一同は昼飯を待ちに待っていたのである、空腹と期待にときめいていた。
 彼らは、昼めしがこんなにうまいとは考えてもいなかった。口にするパンがいつもと同じなら、副菜の干した塩漬け肉も変わらない。持参したぶどう酒を飲みながら昼食を胃に収めた。
 アヱネアスが言葉を吐く。
 『うまいっ!スダヌス、昼めしの味は?』
 『はあ~っ!うまいですな!イリオネス、どうだ?』
 『うまいっ!この一言だ!』
 彼らは、いつわらない昼めしのうまさを口にした。