『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  506

2015-04-13 07:51:32 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らが目にしているイデー山は、東側から目にしている山体である。山の名はイデー山、頂上から山の中腹に向けて草木がないスベスベとした山である。山名は、そのスベスベの意味合いを込めて名付けられている。標高は、2456m、クレタ島のレテイムノ県にあり、クレタ島の真ん中、臍の位置である。クレタ島にはこのイデー山を含めて東地区にひとつ、西地区にひとつの2000m級の独立峰がある。イデー山は、その中で一番に高い独立峰であり、連峰ではない。頂上に立つとクレタ全島が見渡さられる。ギリシア神話のゼウスがこの山の洞窟で生まれ育ったといわれている。その洞窟の在り場所が山の南面中腹の下あたりにあるらしい。ゼウスの神殿があるところである。
 その神殿が一行が目指すソニアナの地から西寄りの南方向にある。一行を案内するスダヌス、クリテスにとって、「そのあたり」であって、「そこである」という認識ではなかった。
 彼らは粛々と歩を進めていく。川に沿っているとはいえ、ゆるいとは言えない登りの坂道であった。朝食休憩ののち、道中の小休止を含めて3時間半余り歩いて、アグソスの集落の台地に立った。
 東の方向にイデー山を仰ぎ見た。ここまで歩いてきた道も振り返って見た。
 雪を頂く山頂、その山は神々しく目に映った。そして、その頂上に立つ憧れが胸中に沸々と沸いた。スダヌスがイリオネスに声をかけた。
 『おう、イリオネス、どうする?クリテスと話し合ったのだが、俺たちが目指しているのは、ソニアナの集落であり、そこにある宿坊なのだが、そこに行くのに、あと4分の1刻(30分)くらい歩かねばならん。そこで昼食としたい。足の具合を統領にたずねてみてくれないか』
 『おう、判った』
 イリオネスはアヱネアスと話し合った。
 『おう、スダヌス、昼めし前にそこまで行こう。足の方は大丈夫だ』
 『そうか。よし!ここからはクリテスが先頭にたって歩を進める。俺が最後尾に行く。出発するぞ』
 一行は歩を運び始める、アグソス地内の三叉路に差し掛かり、イデーの山を目指して右へと向かった。
 遠くの坂の上に散在するソニアナの集落を目指して歩を進めた。アヱネアスが呟いた。
 『おう、この坂道、山であることを「ヒシッ!」と感じる』
 『そうですな!』
 イリオネスが相槌を打つ。彼らは黙して語らず歩を進めた。
 南中にさしかかる太陽は、真下を行く一行に燦々と光をふり注いだ。